第61話 明かしておこう

 なんとなく気分がスッキリして、相変わらず私は魔法研究をしていた。

 同時に副学長として、ひげもじゃオジサンが吐き出す大量の書類をチェックして、魔法査問委員長として妙な魔法の山に埋もれた、危ない野郎を叩き潰す。

 つまり、私はそれなりに忙しい感じで過ごしていた。

「……出来た。魔力消費80%増し、効力20%の回復魔法。なんだ、この無駄な魔法!!」

 ……ロクな研究をしていない。

「おう、相変わらず馬鹿野郎な魔法作ってるか?」

 アリーナが研究室に入ってきた。

「絶好調だぜ。誰がこんな魔法使うんだよ!!」

「だったら作るんじゃねぇ。才能の無駄だ!!」

 私はニヤッとした。

「……この世には、無駄という無駄はないのだよ。分かるかね?」

 アリーナが私を掴んで持ち上げた。

「……偉そうにいってるんじゃねぇ。面白いからやってるだけだろ?」

「……そうともいう」

 アリーナは私を掴んだまま部屋を出た。


「オヤジがやっと最終承認したからな。もう、いい加減話しとかなきゃマズいだろ」

 寮の部屋に戻り、アリーナはベッドに座って私を抱きかかえた。

「別に騙す気はなかったんだ。どう話していいか分からないうちに、ここまできちまったって感じなんだけど、今のただの王女はサーシャだ。これが、男なら王子に変わるけど、それはどうでもいい。これが意味する所は、今の国王であるオヤジの身になにかあったら、次の国王はサーシャだって事なんだ」

「……微妙に気がついてはいたけどな。なに考えてるんだよ。私に出来るわけないだろ!!」

 私はため息を吐いた。

「私なりの判断だ。他に何人もみてきたけど、適任って感じじゃなかった。かといって私がやると、すげぇ仲が悪い第二王女がなにするか分かったもんじゃない。怖くて出来ないって……。サーシャならそういうの関係ないし、裏方で動いてる分にはあのうるさいのも黙ってるだろってわけだ。私はサーシャの頭なら大丈夫って判断したぞ。要らん事は私が色々弄くるし、なるべく負担が掛からないようにするよ。ごめんね」

 アリーナがため息を吐いた。

「なにが大丈夫なんだか分からねぇけどよ、知らねぇからな。猫の王国だぜ。末恐ろしいわ!!」

 私は苦笑した。

「……座っていればいい程度まで頑張るから。これが、究極の我が儘だな。本当は嫌だったんだけどな」

 アリーナは私を強く抱きしめた。

「ったく、物好きもいいところだぜ。そして、私も出世しすぎ?」

 私は苦笑した。

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