第60話 どうにも……
怪我は治ったが、気持ちはすっきりしていなかった。
思えば、アリーナが乗っていると確信していた飛行機械に、なんで攻撃魔法なんか撃ったのか、自分でも全く分からなかった。
なにか攻撃されたのならともかく、ただついてきただけなのに。
あんな場所でもし直撃していたら、アリーナは確実にただでは済まなかったはずだ。
これは、魔法使いとしていかがなものかと、自分に対して疑念を抱いていた。
「……こんな時でも、魔法の研究を忘れない私って」
研究室で呪文を組み立てながら、私は小さくため息を吐いた。
回復魔法に見せかけた蘇生魔法は、実は完成していた。
もちろん、公表するつもりはないが、こんな魔法を作ってしまう辺り、もはやまともな魔法使いではなかった。
「最初からまともじゃなかったけど、ここまでぶっ壊れた魔法使いになっちまうとはな!!」
私は苦笑して、呪文の続きを考え始めた。
「せめて、ケージをぶっ壊せる程度の攻撃魔法くらい、なんか作っておかないと……」
「んなもん、不要じゃ!!」
アリーナが研究室に入ってきた。
「……ああ、アリーナ」
私は小さくため息を吐いて俯いた。
「なんだ、おい。まだ、気にしてるとかいわねぇよな?」
アリーナが笑みを浮かべた。
「……こんなイカれ魔法使い、相手にしない方がいいぞ」
「ばーたれ、魔法使いは誰でもどっかイカれてるんだよ」
アリーナが私を抱きかかえた。
「ったく、また洗ってやるしかねぇのかよ」
「……なんで、洗うの?」
アリーナは私を風呂に引き込んだ。
「なに、私がサーシャにやられると思ったの。この程度で逆襲出来る相手に?」
アリーナは私を湯船に沈めた。
「ゲホゲホゲホ!!」
「なんなら、ぶっ殺すつもりで掛かってきなよ。片手一本で倒してやろう!!」
私はため息を吐いた。
「なんでアリーナをぶっ殺すんだよ。そうじゃないから、納得いかないんだって……」
「なんかムカついたんだろ、その程度だと思うぜ。私はそう思ってるし、いつまでもウジウジしてるんじゃねぇよ」
アリーナは私の頭を撫でた。
「……ムカついて攻撃魔法なんか撃つか?」
「うん、そういう魔法使い多いぜ。私がもしまともな攻撃魔法を使えたら、サーシャ相手でも容赦なくブチ込むと思うぞ。拳を叩き込むより、よほどマシだしね!!」
アリーナは私を抱きしめた。
「その程度の事だぜ。悩むほどのもんじゃない。それで感情的になった挙げ句、あんな事になった私の方が問題だぞ。実は、いまだに立ち直ってないんだからな!!」
アリーナはため息を吐き、私をしばらく抱き続けた。
「……これを失うわけにはいかないんだよ。色々意味はあるけど、やっと出来た友人だぜ。それなのにいつもこれだ。嫌になるよ」
「……そっか、ならよかったよ。結局、アリーナ以外は怖くてしょうがないもん」
私は苦笑した。
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