第56話 決着!!

 アリーナとひげもじゃオジサンの連携で、ヤバい状況は多分脱した。

 ゲージの中に取り残された私は、声を大にしていいたかった。

 お前らの目的は、一体なんだったんだよ!! ……と。

「……こうやってると、ついいいたくなるんだよね。私って、やっぱりネコ? ってさ」

 ……どうでも良かった。

 ひげもじゃオジサンはともかく、アリーナにまで置いて行かれてしまい、まあ、狭くはなかったがゲージの中でため息を吐いた。

「アイツ、帰ってくるだろうな。帰ってこなかったら、前より状況が悪いぞ」

 アリーナがやらかすうっかり野郎は、時として大変な事になるものだった。

 何回ため息を吐いたか分からない頃、部屋の扉が開いて見知らぬ学生が二人入ってきた。

「……こ、今度はなに」

 私はため息を吐いた。

「ああ、先輩のいってた猫ってこれか」

「また、大きなケージだなぁ」

 二人が私の入っているケージを持ち上げて、部屋から運び出した。

 そのまま寮の廊下を運ばれていると、走って戻ってきたアリーナと鉢合わせした。

「おっと」

「きた」

 二人が同時に繰り出した拳が、アリーナの顔面にめり込んだ。

「……ま、マジ!?」

 ぶっ倒れたアリーナをそのままに、二人は重そうにケージを運んでいった。

 しばらくすると、もの凄い足音が追ってきた。

「テメェ!?」

 容赦なくメイスを抜き、完全にブチキレたアリーナだった。

「噂通りの回復力」

「そして、すぐにブチキレる」

 二人はケージを床に置いた。

 完全にアリーナ迎撃態勢に入ったところで、私の麻痺魔法が発動した。

「はい、あとでちゅ~るをあげますから」

「大人しくしていて下さいね」

 しかし、効かなかった。

「……タフな野郎だぜ」

 かくて、アリーナ対二名の壮絶な戦いが始まった。

「……な、なんだ、この二人。アリーナと素手で互角以上に戦ってるぞ」

 一回間合いを取り、アリーナがメイスをしまった。

「……やらなきゃダメか」

 アリーナは冷たく呟き、武器ありの時とは比較にならない速度で動き始めた。

「……め、メイスは手加減の道具だったのか?」

 瞬く間に一人を派手に蹴り飛ばし、廊下に落ちた先で動かなくなった。

「……い、生きてるよね?」

 唖然としている間に、もう一人は首から上が天井版を突き破って、ダランとぶら下がった。

「……以下同文」

 アリーナは小さく息を吐き、笑みを浮かべた。

「おう、いい格好じゃねぇか。そのまま飼ってやろうか?」

「も、戻るの早すぎじゃ!!」

 アリーナはゲージを叩き壊し、私を抱えた。

「よし、ばっちくなっちまったから洗うぞ!!」

「ばっちくって……」

 アリーナは私を風呂に連れていった。


「ごめんね。まさか、あの人がマークしてたとはね。サーシャを狙うのは多いんだよ。これも、私のせいなんだけどさ」

 湯船に浸かり、アリーナが私の頭を撫でた。

「実は卒業しちゃったし、家に言い訳出来る理由がなくなっちゃって、今月末でここを去る予定だったんだ。準備してたらこの騒ぎになって、サーシャがここにいる間は護衛として残れって事になってね。いいんだか悪いんだか」

 アリーナが苦笑した。

「……なに、今月末でいなくなっちゃう予定だったの?」

「言い出しにくくてさ、どうしたもんかって思ってたよ。まあ、そういう理由でこの話はなしになったからどうでもいいんだけど、今度は護衛だぜ!!」

 アリーナが笑った。

「ご、護衛って……VIPな猫だぜ!!」

「その通りだぜ。第一王女の護衛なんて素敵だろ!!」

 アリーナは笑った。

「つまり、お前の方が立場が上って事だな。私は盾になっててでも守れってか!!」

「……無理はすんなよ。やっぱり、アリーナ以外は怖いぜ!!」

 アリーナは苦笑した。

「私だってどうだか分からないよ。いや、最悪かもね!!」

「……いいよ。死ぬ事はないだろ。あの結界、誰かが触れたら私は即死だったぞ。そういうのって強いから、すぐに分かったぜ」

 アリーナは笑みを浮かべた。

「そんなとこだろうと思ったよ。ああいうタイプが考えそうな事だ。ほら、セットならバカにならないぜ!!」

「……変なので撃ちやがったせいで、こうなったんだけどな」

 アリーナは私を抱えて湯船から出た。

「まあ、腐れ縁は続くって事だ!!」

「……頼むから、肝心なものを置き去りにしていくな」

 私は苦笑した。

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