第53話 エキスパート戦開始
アリーナのバカのせいで、なにやらヤバい気配を感じる結界のスペシャリスト、マリーに拾われてしまい、私は鉄杭に縛り付けられたままという状況で、寮の彼女の部屋に連れてこられた。
借りてきた猫。こういう時は、動けなくなるのが私だった。
「まずは、こんなものは外しておきましょう」
マリーは、私から鉄杭を外してベッドにおいた。
「まあ、バカこそ魔法技術発展の源ではありますけどね。サーシャさん相手では、少々程度が低すぎます。あんなもので撃ったところで、あの結界は絶対に撃ち抜けないですからね。もう少し高度なバカにお付き合い頂こうかと思いまして」
マリーは固まっている私を撫で、小さく呪文を唱えた。
体を魔力が抜ける感覚が走った。
「封印結界の一種です。絶対に体を動かせないという点に特化したものなので、普通に私の声は聞こえると思います。これを、自力で解いてみてください。どんな結界でも、解けないものはありませんから。解けるまでは、こうしておきましょう」
マリーは私をベッドの枕元においた。
「これでも猫好きでして、こんな事をするのは心苦しいのですが、卒業という事は魔法使いです。以前から気になっていた相手との、簡単な勝負というところですね。こういうバカも面白いのでは?」
マリィは笑みを浮かべ、私の頭を撫でた。
「焦る事はないですよ。お遊びで作った程度の結界です。そんなに難しくはないでしょう」
ベッドに座り、マリーは小さく笑った。
「結界は怖いものです。自分の身で受けないと、分からない事も多いのです。今までそんな機会はほとんどなかったでしょう。結界技術士なら、知っておいて下さいね」
マリーはベッドから立ち、私を撫でると机に向かった。
椅子に座った瞬間、私は心の中で呪文を唱えた。
マリィがビクッとした。
「む、無詠唱!?」
それきり、マリィの動きが止まった。
……二人揃って動けない。これが、ホントのバカだ。
私は心の中で笑った。
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