第44話 学校帰着

 色々派手ではあったが、要するに私の誕生日というものを祝ってもらったらしい。

 感覚的にないので、戸惑いの方が大きいのだが、いいことでもあり嬉しい事でもある。

 さすがに「城」と愛称まで付くだけに、恐ろしくデカかったアリーナの家からいつもの暴走馬車はひたすら街道を走っていた。

「……おい、この機械音なんだよ。私の耳には壮絶にうるさいぞ!!」

「気にするな。VVVFインバータ制御だから、どうしても作動音がな!!」

 わけの分からん馬が唸りを上げ、馬車の速度も絶好調だった。

 出発の時から降り続く雪が強くなっていき、今や吹雪のような有様になっていた。

「すげぇ雪だな……」

「うん、この辺はことさら降ることで有名だぞ。こんな天気、普通だな!!」

 そんな天候など無視して、馬車はひたすらかっ飛ばしていた。

「……おい、この天気で飛ばしすぎじゃねぇか?」

「問題ねぇ。邪魔なものはみんなぶっ壊して進むからさ!!」

 アリーナが笑った時、天井の上でなにか爆音のようなものが聞こえた。

「……おい、なんか撃ったか撃たれたか?」

「おう、攻撃魔法食らったぞ。この天候だしこの速度で当てるなんて、なかなか気合い入ってるな!!」

 アリーナが笑みを浮かべて私を抱きかかえた。

「……この馬車に攻撃してくる野郎は。ヒヒヒ」

「……おい、なにを企んでる?」

 馬車の左窓の景色を覆うような勢いで爆光が走り、降り積もった雪まで巻き上げてど派手な爆風が馬車を揺らした。

「……」

「王宮魔法使い特務小隊。この馬車の護衛で、ひたすら飛行の魔法であちこち固めてるんだ。しっかし、気合い入った攻撃したな!!」

「……気合い入ってるどころじゃねぇ。私の必殺技クラスの爆風だぞ。なにを撃ったんだよ!?」

 アリーナは私を抱きしめた。

「なんだろうね。なんか、ムカついたんじゃない?」

「……また、隠しやがったな。あとで、教えろよ!!」

 聞いても答えないのは分かっていたので、私はため息を吐いた。

「もちろん、サーシャに隠し事も嘘もなしだよ。だけど、タイミングは待ってね。だから、こんな小出しになってるだけさ!!」

「……頼むぜ。今さら、どうされようといいけどよ!!」

 私は苦笑した。


 もう慣れてきたが、馬車はピタリと学校の正門前に到着した。

「……よく止まれるよな」

「それがウリだ!!」

 アリーナは私を抱きかかえて、校舎に向かって歩いていった。

「あーあ、友人をただの王女にまでしちまったぞ。私も酷いヤツだな……」

 アリーナが苦笑した。

「よく分かってないからいいよ。どうされたって、他に当てがねぇもん!!」

 私も苦笑した。

「だからだよ。酷いヤツだぜ……ごめんなさい」

 アリーナは強く私を抱きしめた。

「……なんか事情あんだろ。好きに使えよ。所詮、猫だって忘れなきゃな!!」

 私は笑みを浮かべた。

「……ありがとう」

 アリーナはそれだけいって、私を寮の部屋まで運んでいった。

 まあ、コイツはコイツなりになにかあるのだろう。

 私は内心で小さく息を吐いたのだった。

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