第45話 年齢不詳だった
誕生日で思い出した。
私は自分の年齢を知らなかった。
これはなにも特別な事ではなく、こういうことに興味がない猫では当たり前の事。
要するに年齢不詳な私だが、これが人間社会では時として面倒な事があったりした。
「……この際だから、ちゃんと『回復術士』と『結界技術士』の資格を取ろうかと思ったけど、年齢制限があるんだよね。両方とも満十五才以上って、私は受験資格あるのかいな?」
実年齢が分かったところで、多分十五才ではないはずだ。
私はそんなお祖母ちゃん猫ではないはずである。
そして、そもそも猫に受験資格があるのか。これが、一番大事だった。
「おう、なに難しい顔してんだよ!!」
部屋にアリーナがやってきた。
「いやさ、これ私って受験資格あるの?」
私は二つの資格のパンフレットを見えた。
「ほう、国家資格にチャレンジとはいいことだ。特に回復術士は少ないから、どこでも重宝されるぜ。受験資格ね……そういうのは任せろ。資格があるかじゃねぇ、認めさせてもぎ取るんだよ。サーシャのためなら、どんな手でも使うってもう決めてるからさ!!」
アリーナは笑みを残し、部屋から出ていった。
「……うっかりいえねぇ。なにしやがる気だ?」
私がベッドの上で頭を掻いていると、アリーナが用紙を持って戻ってきた。
「なに猫っぽいやってんだよ!!」
「……猫だもん。悪いかよ!!」
アリーナが笑みを浮かべて、用紙を二枚差し出した。
「はい、受験申し込み用紙だ。この程度は余裕だぜ!!」
「あれ、受験していいんだ。なにやったか知らんけど、これはありがたく受けさせてもらおうか」
「おう、こういうのは好きなだけやっとけ。資格は持ってて損はねぇ!!」
アリーナが私の背を撫でた。
「ちなみに、私はいつの間にか一級魔法工学技士取ってたりするぞ。機械を作り放題だぜ!!」
アリーナが恐るべき事をいった。
「い、いつ、取ったんだよ。早く教えろ、馬鹿野郎!!」
「戻ったら合格通知がきてたんだ。合格記念に世界最大になる二百三ミリ高出力魔力砲でも作ろうかな。設計図はあるんだぞ!!」
「……兵器はやめなさい」
アリーナは私を抱えた。
「というわけで、当然風呂だ。洗ってやる」
「なんで当然だか知らねぇが、好きなだけ洗え!!」
アリーナは私を風呂に連れていった。
「あっ、まだ消えてないんだ……」
私を泡だらけにしようとして、いまだにしつこい火傷痕をみて手が止まった。
「んなもん、かさぶただ。痒いだけで問題ねぇ!!」
アリーナは無言で私を洗った。
泡を落とし、私を抱えて湯船に浸かった。
「あれがまだ消えないなんてね。うっかり落としたじゃ済まないって……」
アリーナが私の頭を撫でた。
「うっかり、結界を解いた私が悪いだけじゃ。アリーナはちゃんと拾いにきてくれたじゃん。それを責めるってどうよ?」
私は笑みを浮かべた。
「結果がこれだ。私は自分を許さない」
アリーナが冷たくいって、私を抱きしめた。
「おいおい、ガチになるなよ!!」
アリーナは答えず、静かに湯船から上がった。
私を乾かして寮の部屋に運ぶまで、アリーナはなにも言わなかった。
「意外と真面目なんだよな、アイツ。疲れちまうっての!!」
私をベッドに置いて、そのまま部屋を出ていたアリーナの背にいって、私は苦笑した。
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