第13話 解けない就職方程式

 知っていたか。全ての五次方程式は解けないって。アーベルが解いたらしいぞ。僕は自慢げになりにそう話した。

「よく勉強してるね。工藤くんは。」

 最近、少し自慢するようになった。数学の話をなりと話すと、とてもいい気分だ。褒め方もうまいし、僕もなんだか最近は調子がいい。

「ところで将来のこと考えてる?もうすぐ志望調査だよ。」

 それなんだけどさ。

 少し間が空いて、真剣な話の雰囲気になった。

 数学科に入りたいんだ。

「本気?」

 ああ。数学は俺の唯一の取り柄だからな。今までの生活を白紙に例えられるのは明白だ。それに数学が書き加わったのは幸運だったと今は思う。

「でも、まことくん高校の数学はまだ評価Cでしょ?」

 昨日コツがわかった。ちょっとやってみようと思う。僕は決心の顔でそう打ち明けた。何かわからないが昔なかったものが私にはある。そう思うだけの努力は最低限、あの日から積み上げて来たつもりだ。

「大学は?」

 生里大学。そう答えた。何も数学以外取り柄のない大学で、入学試験も数学だけだ。うちの近くなので地理的問題は全くない。

「おじさんのいる大学か。」

 できると思うか?僕は信念をすでに持っていた。数学をとりあえずやり遂げようという信念を。聞いたのは確認に過ぎない。

「難しくはないけど……。いいの?」

 ん?何がだ?僕の人生に見えた立て札に注意書きという落書きを書くつもりだろうか。なりの言うことだから、そう思って真摯な態度で聞こうと思った。

「就職先探すの大変だよ。あの大学は。コネがないもの。」

 仕事か。

 そういえば考えていなかった。仮に大学を好きなところへ行ったとして、仕事はどうするんだろう。

 うーん。

 部屋で悩む。僕は今まで、未来のことを一切考えないできた。

 やっぱりこのまま、無駄なことだとやめてしまうのだろうか。

「まこと!お客さんよ!」

 まみだった。

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