第12話 勇気のしっぽ


 ただいまと言って、自分の部屋に入る。

 ベッドに寝転びながら、今日やった講義の内容を確かめる。

 単位元、逆元。

 みんなにも教えてみたい。僕はそう思った。

「言わなくていいのです。あなたにはまだ荷が重すぎます」

 手元の指輪が光って話しかけてきた。

「あなたの理解ほどに皆さんには度胸を理解する心はないのです」

 なぜ止めるんだろう。僕は疑問に思った。思っただけで指輪は語りかけてくる。

「恥ずかしい話なんです。あの教授にこの話ができただけでも奇跡なのです」

 恥ずかしくなんかないよ。とっても分かり易かったぞ。

「あの教授のために仰らないでくださいますか。彼もまた発展途上なのです」

 僕は何か言いたかった。何かが言わせてくれなかった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る