第10話 相性基礎論

「え?本当?」

 そんな驚かれても。僕だけ何もしてないのが普通みたいな驚き方するなよ。これでも気にしているのだから。

「そう!本当なのね!」

 まみは踊り出すくらいに喜んだ。何にそんなに驚いたのだろう。数学なんて5教科中で一番嫌われてる科目じゃないのか。何の役に立つのかもわからない教科を恋人ー一応そう言うことになっているってだけだけどーが学んでも、こんなに喜ばないと思うんだけどなあ。

「決めた!まこと君!今日うちに来ない?」

 で、来たわけだ。恋人の家に。

 初めてだった。

 家族の人は歓迎してくれた。特に良妻賢母とはこのことだと思ったのはまみの母だ。父は俳句の読み手で講義もやっているらしいのだが、その父は友人とよく飲みにいくそうなのだ。帰りが遅い時も文句ひとつ言わず介抱してやるらしい。と言うか、うちの家族では夜遅くまで起きていることがありえないから聞いて驚いた。おまけに料理もうまい。

 うまいなこのザンギ。ちゃんと二回揚げた色になってる。

「工藤君、美味しいでしょそのザンギ。」

 はい。本当にお母様は料理お上手ですね。このザンギきちんと火が通っているのに柔らかくて味付けもちょうどいい。

「でしょう?うちの娘は本当よくできた子よ。」

 ……ん?……そのままスルー。できない。聞き間違いだな。……スルーできない。スルーできないキーワードを、今この美人の奥さんは言った。まみ、彼女はなんて言ったの?

「それ作ったの私。」

 え?どういうことだ?ますます耳が遠くなったような。今言ったことは要約すると、まさか、まみが作ったのか!?

「そうよ。」

 にこりと笑うまみ。あんぐりと口を開けてしまうほどの仰天ぶりに自分もさらにびっくりした。この金のザンギをまみが?

「これからもまた来てね。」

 へぇ。すごいなぁ。これがおまけでついてくるならとんでもなく嬉しいな。数学もやるだけやってみるもんだ。

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