第2話 Qリング
帰って来た時の話。
何もない一日だった。いつも通り授業を聞いて、弁当を食べて、授業を聞いて終わり。いつも思う。こんなに同じことを毎日繰り返して、僕はなぜもがき苦しまないのだろうか。そう思った途端、腹がぐうとなった。心なしか文字通り心もどこかにおき忘れてしまったのではないか。いや、無くしたのなら探せる。私の場合それは探す以前の問題なような気がするのだ。
でも、自分には何かを成し遂げるための根気がない。どうしようどうしようと思っているうちにどうでもいいやと思ってしまう。どうせ暇に哲学めいた話を重ね塗りしているだけなのだ、動いたほうがいい。でも眠いし。そもそも学校に疲れて、動ける気がしない。寝よう。どうせ考えたって、何もない僕には何も生まれない。
そう思った時だった。
夕方の黄昏から、どう窓越しに入って来たんだろう。窓は閉めているのに。きらきらしたものが。ん?これは。
指輪だ。金の指輪。
ちょっと嬉しいが、もらってしまっていいのだろうか。窓を開けて投げかけた人を探すがそれらしい人影はない。
ふむ。
じーっと指輪を見ていると、Qの字がモチーフになっているのに気づいた。そして何やら文字が刻まれている。
ルート3、p≡1,11mod12などと書いてある。数学か?ルートは明らかに数学だ。でも後の文字はなんだろう。
ジロジロ。
するとほのかに指輪が光っている。金は滅多にお目にかけないからどれだけかはわからないが、金のきらめきよりもその光は大きかった。そしてその輝きは、どんどん光量を増した!
どうなってんだ!?
ぴかー!
中に浮遊する指輪!
わー!
半分錯乱状態だ!なんまんだぶと経を唱える僕を尻目に、光は落ち着きを徐々に取り戻した。
大丈夫か?気配を伺っていると、急に喋り出した。
「Qリングルートマイナス5モードに移行します。ケース41。6プラスルートマイナス5、6マイナスルートマイナス5へと解消します。解消を行うためにプログラムを起動しました。フェルマー様、久しぶりのご利用ですね。我々Qリングは、あなたの割り切れない関係を解消致します。ご安心を。」
Qリング?この指輪のことか?プログラム?どういうことだろう。
こうして、Qリングと僕、工藤まことは出会うことになった。
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