ぼくるい〜僕の類体論〜
@horloge144
第1話 まこととまみ
普通の高校生というのは僕みたいな人間のことを言うのだろう。普通という言葉の意味は曖昧でよくわからないけれども、普通か?と聞かれればハイと答えるだろうな。
さすがにこのような席?に出されて仕舞えば、自分の過去を、多少なりとも正直に話さねばならない。僕だってそれぐらいの良心はわきまえているつもりだ。
だから、僕は工藤まことだ、とまず自己紹介をするのが筋だろう。汎用性のない話し方で申し訳ないが。
今日は僕のいつもの行き帰りに起きたことを話そうと思う。とは言っても、雑談のような話しかまだできないのだが。
僕は毎日近所の彼女加藤まみと一緒に登校する。なんか、この時点で世の多数の男子を敵に回しているような気がするが、そんなに美人ってわけでもない。魅力的な鼻筋だけれども、顔は左右対象だけども、大人しすぎる。でもそんなまみと僕は一応恋人だったりするわけだ。繰り返していったが。恋人といっても、周りに無理やり貼られたレッテルが一人歩きするのを、後ろからぼーっと眺めているようなもんだ。はっきり言う。彼女と僕にはほとんど接点がない。なんでかは知らないけど話が合わない。この前も話していて仰天な展開になった。
「昨日の例のテレビ番組面白かったね。」
まあな。いい景色だったな。
「うん。でも暑そうだよね。」
暑いの苦手か。女性だから、気にしているのは日焼けのことか?
「うん。ちょっと。日焼けしたくないし。」
やっぱりそうか。僕は日焼けしても大丈夫だと思うが。まぁ気になるなら向こうの衣装を着込んで観に行くことだな。ちょっとみてみたいと言われれば、まあそうかもしれないな。
「え?衣装?」
民族衣装だよ。過ごしやすいらしいぞ。テレビでやっていたじゃないか。綺麗なワンピース。名前は、なんだったかな、と思い出そうとすると。
「そんなに有名な民族衣装があるの?」
おや?と思った。そこで、お前、昨日何観ていたんだ?と話しかけたら。
「何って、ガラパゴスが来た!でしょ。」
世界ピラミッド発見!は観なかったのかよ。普通そっち見るだろ。なぜ最初に会話が成立したんだとか考える前に、私は性格からだろう、突発的に憤慨した。
「この前一緒にガラパゴス見ようねって言ったじゃない。」
そうだっけ?そういえば美しきかなガラパゴス、かわいいかもガラパゴス、と喋って、一緒に見ようねと言っていたかもしれない。
「人の話は聞いておこうよ。」
しょうがないだろう?ピラミッド見たかったんだから。会話というのは、得てしてそんなもんだ。記憶に残るものではない。精神論では解決できない、そんなものなのだ。僕は少なくともそう思っていた。
とこんな具合だ。
え?その後は?だって?テレビの話をして後何を話せばいいって言うんだ?言えることなんか何もないじゃないか。変なこと言うなよ。
ともあれ、そうやって授業を聞いて大体50点を取って頭の不合格ボーダーラインをギリギリ渡りながら、僕は登校を続けるのだった。ちなみに遅刻も欠席もない。取り柄といえば取り柄かもしれんが。
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