第4話
そしてその後、私と涼太は同じ高校に進んだ――。
でも、同じ学校とはいっても私は進学科に涼太はスポーツ科に……とお互い全く違うクラスへと進んだ。それともう一つ。私は『どこの部活動にも入部』しなかった。
「なんでバレー続けなかったの? 私、雑誌で何度か見たことあるよ?」
「……」
――六月の中頃。
クラスの面々の顔も覚え、学校行事もそろそろ何かしら入ってくる時期の昼休み、突然私に話しかけて来た人間がいた。
お相手は『元バレー部主将』で同じクラスの女子だった。しかし、そんな彼女も高校でバレーをしていない。
「別に、高校は勉強に専念しようと思っただけ」
「ふーん」
まぁ、バレー部に入部しなかった事に関しては涼太も「えー、なんで入部しなかったんだよ」とふて腐れていた。
実際のところ、大会終了後。いくつか推薦がきていた。実はこの学校からも推薦をもらっていた。
しかし、自分の限界を自分で引いてしまっていた事に情けなくなり、バレーを続ける気力はないものの涼太とは離れたくないと思い、推薦を蹴飛ばし、この学校には『一般入試』を受け、入学した。
「まぁ、この学校は男子も女子も強豪だもんね」
そう、だから朝から晩まで嫌が応にもバレー漬けになるのは目に見えている。
「それにしても、たまに来るバレー部の男子。入部して間もないのにレギュラー確定なんでしょ?」
「詳しいね」
「まぁ、ただでさえ強豪で競争率高いのに、その中で入部したばかりの一年が……ってなったらそりゃあ目立つよ」
「そんなものなんだ」
「そんなもんよ」
「ふーん」
正直、競技から離れてしまうとあまり興味がなかった。しかし、彼の才能が『強豪校でレギュラーをとる』だけで終わるとは思っていなかった――。
◆ ◆ ◆
「ふー、悪ぃな。買い出しに付き合ってもらって」
「別に息抜きにはちょうどいいよ」
ある日の朝――。
突然バレー漬けになって、遊ぶ暇もないはずの涼太から連絡がきた。その文面には「買い出しに付き合ってくれねぇか?」と書かれていた。
「マネージャーとかいないの?」
「あー、なんか男バレって怖いらしくてなかなか来ねぇ……って先輩たちが嘆いていたな」
確かに、男子バレーボールと言えば大体背が高い。異様な圧迫感はある。怖いと思われても不思議ではない。
「それに一からやるってなると、色々勉強しねぇといけないし、先輩のマネージャーもいないから初心者は大変かもなぁ」
「まぁ、確かにスコアの書き方とか覚えなきゃいけないし、テーピングとかも出来るといいだろうし……難しいかもね」
「はぁ。だから、俺たち一年がこうやって暇を見つけては当番制で買い出しをしているわけよ」
「なるほど」
「でも、本っ当に久しぶりだよな」
「まぁ、あんたは部活が忙しいから」
朝は朝練で朝早く、夜は自主練習で遅く帰るため、ほとんど一緒に登下校が出来ていなかった。
「なんか……いいな。こういうの」
こういう事をサラリと言ってしまうあたり、敵わないなと思う。
「どっ、どうかしたか?」
「なっ、何でもない」
本人は思った事を言っているだけなのだから、私だけが意識してさらに恥ずかしい。
「……なぁ、
「なっ、何?」
「お前、マネージャーやらねぇか?」
「え?」
「だっ、だってよ。元女バレで全国にもいっていてるから、スコアなんてお手のものだろうしし、必要なモノ大体は分かるだろ? それに元選手だからテーピングも出来るしさ」
「……」
涼太が言っている事は珍しく的を射ている。
「それに何よりまた一緒に登下校が出来る!」
「それが一番の目的でしょ」
なんだかんだあれこれと考えていながらも涼太の「また一緒に登下校が出来る」という言葉は、実はちょっと嬉しかった。
「えー、いいじゃんかー」
でも、簡単に承諾するのはなんか嫌だった。
「ちょっと考えさせて」
だから、その場で返事はせず、涼太の提案は一時的に保留にした。
でも結局、この話の二週間後に、私は男子バレーボール部のマネージャーになった。かなりしつこく勧誘されて……根負けした形になってしまったけど……。
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