勘違いヤきチョコレート

第1話


「はぁはぁっ……」

(なんで、今日に限って朝から呼び出すのよ!)


 かなり唐突だが、今、私はとても急いでいた。私の住んでいる町は、お世辞にも『都会』とは言えない。


 さっきから駆け抜けているこの道も、残念ながら未だにコンクリート整備は行き渡っていない。


 そして、見渡すと山も緑も多く、山を下ればすぐに田んぼが広がる。その上、盆地で夏は湿気で暑く、冬には大量の雪が降る。


「はぁはぁ」

(ここだよね?)


 そんな自然に囲まれたこの町が私は大好きだ。そして、この町に最近、『お店』が新しく出来た。


「…………」

(合って……いるよね?)


 一応、確認はしているが、やはり不安になってしまう。それくらい不思議な『場所』に建っていた。


(でも、本当になんでこんな山の入り口に建っているんだろう?)


「……あれ?」

(なんだろう。あれは、自転車?)


 目に入ったのは、1台の自転車だった。確かに、自転車で来る人がいてもおかしい話ではない。


 だが、ここまでの道のりは決して楽ではなく、かなりのデコボコした道が多かった。


(なんか彼の自転車に似ているような……。って、それどころじゃない)


 実は私には、もう一つ不安があった。


 そうこのお店は、こんな田舎で売る理由が分からない。それほど珍しく「チョコレート」を専門に扱っていた。


 しかし、このお店は「売っている場所」や「チョコレートを売っている」事以外にもかなり変わっており、そのとある理由から閉店する時間がかなり早いのだ。


(あっ!)


 どうしようとウロウロしていると、お店から1人の従業員らしき人が出てきた。そして、その人は看板を折りたたもうと看板を覗き込む様にしていた。


「あっ、あのっ!」


「はい?」

「…………」


(うわっ……)


 私の声を聞いて顔を上げたその人に、私は思わず息を飲んだ。


 その人は、長髪の金髪を1つにまとめており、そして、雪のように白い肌。サファイアとアクアマリンの間をとったような真っ青で宝石の様な目。


 服の上からでも分かる程、スラッと長く伸びた脚。そして、鼻も高い。


 しかし、その雰囲気は日本人とは違う。決して威圧的という訳ではない。だが、その人はその外見もあってかその独特な雰囲気は……外国人だった。


 ただでさえ田舎なこの町に出来たのだ。当然、噂も色々と飛び交い、すぐに広まる。そして、その噂の中でよく聞いていたのが、「商品の話」と「店員の話」だった。


(でも、みんなが言っていた通りだった。この人を分かりやすく表現するなら……)


 その表現はかなり月並みかもしれない……。だが、やはり「美人」というその言葉が一番その人に合っていた――――。


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