第45話 冴えない夜の眠りかた【英梨々視点】

「ねぇ、倫くん」

 私は、小学校の時の彼にむかってそう言う。

 周囲からの迫害で私たちはすれ違ってしまった。

 私も彼も意固地で、ちょっとベクトルがずれてしまっていたから、ふたりのすれ違いはドンドン大きくなっている。


 彼を恨まなかったと言えばウソになる。私と一緒に地下に隠れて欲しかった。でも、彼は強かった。強すぎた。弱すぎたわたしとは対照的に……


 そんな彼がたまらなく大好きで、誇らしくて、そして、憎たらしかったの……


 でも、このままではいけないとわかっていたの。

 だから、今日は勇気を出して言う……


 彼は怪訝な顔をしている。久しぶりに話しかけたのだから当たり前だ。


 それが私から勇気を奪い去りそうになる。

 でも、ここでは止まれない。


「ねぇ、倫くん……この前はごめんね。また、私の……オタ友になってくれない、かな?」


 ※


「どうして、あんな簡単なことが言えなかったんだろうな~、私……」

 夢に見た馬鹿な妄想を封印しようと私は枕に顔を沈めた。

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