第36話 冴えない締め切りの破りかた②【霞ヶ丘視点】

「センパイ、いるんでしょ。わかっているから、ここを開けてよ」

 私は、倫也くんの大声で目をさました。

 なんで、彼がここに居るのよ。


「どうしたのよ、倫理くん。大きな声を出して」

「だって、町田さんが、霞ヶ丘先輩が大変だから、様子を見てきてくれって」

「ああ、私の新作原稿の締め切りがやばいから、みてきてくれってことでしょ」

「まあ、そうだけどさ」

「まったく、町田さんも大げさなんだから」

「ちなみに、センパイ…… 今の進捗は?」

「……」

「ねえ、先輩?」

 私は、PC上の画面を見せた。


 画面はまだ、一文字も書いていない圧倒的な白さを披露する。


「ちなみに…… 締め切りって?」

 彼はおそるおそる聞いてくる。

「明後日よ」

「せんぱあああああああああああああああああああああああい」


 ※


「なんとか、間に合ったね」

「ええ、倫理くんと、情熱的な夜を迎えられて私は満足よ」

「もう、言いかた」

「また、ふたりの朝なうの写真撮る?」

「…… 撮りません」


「ねえ、先輩」

「どうしたの、そんな疲れた声をして」

「どうして、先輩は締め切りを守らないの?」

「作家が締め切りを守らないことに、理由なんてあると思うの?」

 そう言って私たちは、ためいきをついた。

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