第35話 冴えない締め切りの破りかた【英梨々視点】

「ねー、倫也」

 私は、倫也の部屋でゲームをしていた。そう遊んでいるのだ。

「なんだよ」

「イベントの締め切り寸前に、こうしてあんたの部屋で遊んでいる私の気持ちを300文字以内で答えて」

「へー、そうなんだ。って、締め切り?! 具体的にいつ? どうして、遊んでいるんだよ」

「明日に決まってるじゃない。もうあきらめようかなって……」

「すぐに作業に戻ってください。柏木先生」

 倫也はいつものように、叫んでいた。


「なー、英梨々。どうして、いつも締め切り守んないだよ~」

「なによ、クリエイターが締め切りを破るのに理由がないって、前にも言ったでしょ」

「じゃあ、なんで、そんな修羅場の時に俺んちなんて来てるんだよ」

「……」

「そこ黙るところ?」


「倫也のばーか」

 私はそう毒づいて、作業に戻る。

 頑張らなければいけない時に、好きなひとの顔を見たいからなんて、言えるわけがないじゃない。

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