第34話 冴えない告白の断りかた【加藤視点】
「ごめん、放課後に呼びだしちゃって」
「うん、別にだいじょうぶだよ~」
私は、いつものようにサークルに向かう途中、同級生の男の子に声をかけられた。
たまに、移動教室とかで話したことがある男の子だった。
気軽に話すんだけど、あいさつぐらいのことしか話したことはないような関係の人だ。もしかすると、数か月前の安芸くんみたいな存在なのかもしれない。
ここは校庭の中庭の木の下。
いるのはわたしたちふたりだけ。
これじゃあ、まるで安芸くんと遊んだギャルゲーのようなシチュエーションだ。
エンディング。約束の木の下で。
まあ、それはあくまで、ゲームの中の出来事で……
私が当事者になるわけが……
「加藤さん、俺と付き合ってください」
「えっ?」
私は変な声をあげてしまう。
予想外の告白だった。
人生初の告白だった。
そして、それは欲しい人からの告白ではなかった。
「きゅうで、ごめん。返事は後でいいから、さ。考えてみてくれない」
私は、目を閉じた。そこに瞼の中に浮かんだ顔は目の前の彼ではなかった。
「ごめんなさい」
私は、彼の目を見て、誠実な対応をした。
「そっか。やっぱり、他に好きなひとがいるとか? 例えば、いつも一緒にいる安芸とかさ?」
彼は無念をにじませながら、私に問いかける。
心が痛い。
「……」
私は何も答えることができなかった。
大きくなったり小さくなったりする気持ちを恋とよんでいいものなのか分からなかったから。
「ああ、ごめん。言いだしにくいよね。今日はありがとう。じゃあ、またな」
「うん、また」
そう言って、彼は校舎の中に向かっていく。
私は、それを静かに見送った。
※
「冬コミが近いからって、言ったら、ドン引きされて、振られちゃった」
そして、私はみんなに嘘をついた。
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