第29話 いつものコンビの出会いかた【霞ヶ丘視点】

 昼下がり、いつもの喫茶店で。

「あれ、センパイじゃん。どうしたの? 今日はひとりで~」

「氷堂さん、珍しいわね。あなたもここにひとりでくるなんて……」

「トモの家に乗りこんだら、留守でね。あと1時間は帰らないって言うから、ここで暇潰そうと思ったんだよね」

 そう言って、私の席の前にずけずけと座ってくる。

 まだ、相席の許可を出したわけじゃないんだけど……

 もちろん、そんなことを気にする人じゃないのはわかっている。


「私が、彼氏とデート中って言ったら、どうする?」

 笑顔で、コロッケとパンのセットを注文した氷堂さんに私はちょっと皮肉を言う。

「そんなわけないじゃん。だって、センパイだよー」

「なんか、ものすごくけなされているのは、気のせい?」

「えー、なんで? どうせ、原稿が進まないから、珍しく散歩して、いつもの喫茶店に来ちゃったみたいな感じでしょ?」

「それは、そうなんだけど」

 ずっとこんな感じなのである。

 サークルメンバーのなかで、私の天敵みたいな存在だった。


「それにしても、よく食べるわね、氷堂さん。もしかして、お昼食べてないの?」

 この喫茶店の料理は結構ボリューム感がある。

 彼女は、それをモグモグ食べつくしていた。

「えー、食べているに決まってるじゃん。これはおやつだよ」

「すごいわね」

「センパイも食べる? 一口あげるよ」

「いらない」

 私は彼女の提案を断……

「えー、もったいない。な~」

「もらうわ」

「えっ、いま、いらないって……」

「そんなこと言っていない。もらうわ」

「センパイ、トモが言っていたメスの顔になっているよ」

「いいから、テーピングよ」

「なに、言ってるの? わかった、はい、あーん」


「どう、美味しい?」

「うん、なかなかね」

「そう、よかった」

 氷堂さんは、にやにやしている。

 どうしてなのか、私がよく分かっていた。


 私が幸せそうな顔をしているから……

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