第16話 冴えない嘘の見破りかた【加藤視点】

「ただいまー」

「おかえりー」

 倫也くんとのでー、もとい、取材を終えて帰宅したわたしは、いつものようにただいまを言う。だけど、いつものように発した帰宅のあいさつは、いつもとは違ったひとから返ってきた。


「お姉ちゃん……」

「おかえり、恵!」

 この前の姉妹の再会を思い出して、私は、なんとなく嫌な予感がしていた……


「遅かったね、恵。彼氏とのデートは楽しかった?」

「デートじゃないよ。ゲーム作りのための取材だよ、”まだ”……」


「”まだ”?」

 やっぱり、お姉ちゃんは、鋭い。わたしのミスを的確に指摘されていく。


「単なる言葉の綾だよ。ゲーム作りの取材に行ってきただけだから」

「ふうううん」

「むぅ……」


「彼氏とは仲良くやってるの?」

「だから、彼氏じゃないって」

「そうだよね、”まだ”、彼氏じゃないんだよね」

「だーからー」


「まあ、いいわ。ご飯でも食べながら、ゆっくりお話し聞かせてよ」

 お姉ちゃんは、不敵な笑顔を浮かべる。

 本当に、「なんだかな~」。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る