第14話 冴えない後輩の落としかた③

 おれたちは、オタクの戦場に来ていた。

 出海ちゃんのサークルを手伝うために……


「ありがとうございます。倫也先輩。手伝いに来てくれて」

「いいよ、いいよ。気にしないで、出海ちゃん。おれみたいな消費豚は、こういう創作に憧れているんだよ。ちょっとでも手伝えて最高に嬉しいよ」

「倫也、先輩。わたしみたいな弱小サークルのために……。本当に、ありがとうございます」

 そう言って抱きついてくるかわいい後輩。ああ、いい匂い。じゃなかった。準備、準備しなきゃ……


 ※


「やっぱり、ひと、来ませんね」

 出海ちゃんはさびしそうにそう言う。たしかに、ひとの出入りは決して多くはなかった。ほとんどが固定客で、買っていってくれるのだけど、在庫はかなり残っている。


「でも、ここでは好きなものを一緒に共感できる。最高の場所だからさ。前向きに頑張ろうよ」

「そう、ですよね。でも、倫也先輩にかっこいいところ見せたかったんですよ~」

 そう言ってしょげる出海ちゃん。この子は本当に喜怒哀楽がはっきりしている。


「そういえば、出海ちゃん。おれ、まだ同人誌読んでなかったよ。読ませてもらってもいい?」

「あっ、そうでしたね。どうぞ、どうぞ。読んでください」

「ありがとう。では、早速」


 そう言っておれは同人誌をめくる。思った以上に出海ちゃんの画力はかなりあるようだ。話もおもしろそうだし……


 ページの後半をめくる。

「これは……」

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