第13話 冴えない後輩の落としかた②

「名古屋からこっちに帰ってきたんだね、出海ちゃん」

 おれたちは公園に移動して、昔話に花を咲かせる。夕暮れの公園は、こどもたちが駆け回っている。その様子は、まるで数年前の俺たちのようだ。


「はい! 無事にこっちに帰還できました」

 出海ちゃんは本当に嬉しそうにそう答えた。この元気の良さは昔から変わらない。見た目は、本当にかわいくなっちゃったけど……


「倫也先輩、わたし、変わりましたか?」

「ああ、すっごく変わった。最初見た時は、誰だかわからなかったもん。本当に可愛くなったよ、出海ちゃん」


「もう、倫也先輩ったら、お世辞がうまいんだから~ でも、わたしが変われたのは、先輩のおかげなんですよ。先輩がわたしに新しい世界を見せてくれたから」

 オタクの話な。ちょっと事案案件になりかねない言葉選びだけど…… おれは、それにツッコもうとした瞬間、彼女の表情は変わり始めた。


「先輩、お願いがあります。今度のなつやすみ。デート、してくれませんか?」

「はっ、デート」

「はい、一緒に天国にいきましょう」

 そう言った瞬間、おれはすべてを察した。たしかに、それは天国だけど、大声で言っちゃだめええええええ。

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