卵焼きの作り方①
「・・・・・」
「・・・・・」
「・・・ほんっっっっとに、ごめん!」
19:23。
目の前には大量の卵焼き。卵焼き、卵焼き、卵焼き___ほぼすべて失敗作。
さすがの私でもげんなりするほどある。
もはや、卵焼きタワーができている。
「いや、謝らなくていいから。
それにほら、けっこう上手くなったじゃん。ね?」
木村くんはこう言ってくれますけど、くれますけど!!!
うわあああああ、ほんとうにごめんなさいいいいいいいい!
迷惑でしかないでしょ!これ!
「ごめん、ごめん、ごめん!
自分の家で練習するべきでした!ごめん!
もー、ほんとうにごめん!」
「だから、謝らなくていいって。
楽しかったよ。
鳥山さんと料理するの。
いつもはひとりで料理してるし、誰かと一緒に家にいるっていうのもすごく嬉しいし。
ほら、食べよう。」
そういって、目の前の卵焼き(甘いやつ)をひとつ掴んでひょいっと木村くんが口の中に入れた。もぐもぐした。
ってええええええっ?食べて大丈夫なの!?
「ちょ、木村くん!
だだだ、大丈夫!?」
「うん!全然平気!美味しいよ。鳥山さんも、ほら」
え、大丈夫ナンデスカ?
美味しそうに卵焼きを食べる木村くんを見ながらぽかーん、としてると、木村くんがごくりと卵焼きを飲み込んだ。
「鳥山さんのおかげで食べられるようになったよ!
いま、鳥山さんと一緒に卵焼き作れて楽しかったからだと思う!
多分これから、鳥山さんと一緒なら絶対食べれる。
本当にありがとう!」
ものすごく嬉しそうに私を見る木村くん。
いや、私、ただただ木村くんに迷惑かけてただけな気が・・・。
「え、私はなにもしてないって言うかむしろ、木村くんの足手まといになってたというか・・・」
「そんなことないよ。
誰かと料理するなんて初めてだったし、それも好きなひととだからね?
ふふ、すごく楽しかったなあ、僕。」
目を細めて幸せそうに笑う木村くんをみたら、まあいっか、となってしまう私。
だって木村くん、本当に幸せそうに笑うんだもん!
「そ、それなら良かったです・・・」
「うん。ほら、鳥山さんも食べて!
___んー、僕は次はこれ食べようかなあ」
木村くんが、ひょいっと再び卵焼き(ニラが入ったやつ)を手に取り口に投げ込む。
「美味しい~!やっぱり卵焼きは美味しいねえ。
僕、何年ぶりに食べたんだろう?
うわあ、すごく嬉しい。
鳥山さんのおかげだよ。」
な、なんか、木村くんといると私まで幸せになってくる・・・。
よし、私も食べちゃえ!
目の前にあった、海苔が入った卵焼きを口に放り込む。
「美味しい・・・!」
見た目は微妙だけれど、味は意外と良かった。
・・・まあ、木村くんが作る卵焼きの方が何倍も美味しいけど!
「でしょう?もっと食べなよ!」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
30分後。
「おなかいっぱ~い!」
「美味しかった~!」
見事にふたりで卵焼きを完食しました。
ぱちぱちぱち。
ちなみに、片付けも終えました。
「鳥山さんはどれがいちばん美味しかった?」
「うーん、甘いのかな!木村くんは?」
「そうだなあ、僕も甘いのかなあ」
「えへへ、同じだね!
っていうか、大丈夫!?気持ち悪くなったりしてない?あんなに卵焼き食べて!」
「全然平気。
ありがとう。本当にありがとう。
___でさ、
僕と今日から付き合ってくれるよね?」
あ、忘れてた、それ・・・。
いや、あの、ですねえ、
「ま、まだ全然卵焼き上手に作れないし、まだです!」
「なんでよ~・・・。
お願い。今すぐ君と付き合いたい。ねえ、ダメ?
鳥山さんのおかげで卵焼き食べれるようになったよ?僕。
それだけでも、十分、鳥山さんの言う償いとやらは果たせてると思うんだけど。
___もっとも、僕はそんな、鳥山さんに償いだの謝罪だのはしてほしいと思ってないんだけどね。」
たしかに、一理あるけれど・・・。
お願い、と必死に頼む木村くんを見て心が揺れる。
むむむむむ。
「私だって、はやく木村くんと付き合いたいけど・・・」
「じゃあ付き合おうよ。
・・・僕、はやく鳥山さんのこと抱き締めたくて。
いや、付き合ってなくてもそういうことしていいんだろうけど、あの、なんとなく、ね?
それに、なんというか、はやく、鳥山さんは僕のもの!って独占したい。
・・・あ、ごめん、僕のもの、って独占っていうのは良くなかったね、えっと、僕の彼女!みたいな。
・・・っ、なんかごめん!気持ち悪いこと言っちゃった!
わ、忘れて!
で、でも!はやく鳥山さんと付き合いたい!」
しどろもどろになって顔を赤くしながら私に訴えてくる木村くんを見て、私の限界が来た。
もう無理、嬉しいのと恥ずかしいのと照れくさいのとでおかしくなりそう。
なんだかもう、おかしくなっちゃう。
ええい、ままよ!
「わ、わかった。
私でよければお願いします・・・。
あ、あと!
き、気持ち悪くなんかないから!
むしろ嬉しいっていうか、っ、と、とにかく、私も木村くんみたいに思ってます!」
恥ずかしいいいいいいいい!
「っ、じゃあ、いいの?今日からで。」
「うん。お願いします。」
「嬉しい。
鳥山さん、ありがとう。
・・・あと、あんまりかわいいこと、言わないで」
「へっ?」
「い、いや、なんでもない!
きょ、今日はそろそろ帰った方がいいよね!もう暗いし駅まで送っていくから!ね!?
よし、帰ろう帰ろう。」
「う、うん、そうだね、って、大丈夫だよ!ひとりで帰れるから。」
「ダメだよ。
暗くて危ないんだから。
それに、ちょっとでも長く鳥山さんといたい、から。」
ききき、木村くんんんん?
もうさっきから、きみのせいで、私ほんとうにやばいんだけど!?
「そ、それじゃあお言葉に甘えて」
私も木村くんと少しでも多く一緒にいたいよ、と言える(精神的な)体力は残ってなかった。
あーもう!!!木村くん大好き!!!
(おしまい)
ちなみにこのあと、木村くんの家を出発する前にぎゅーってされて本当にやばかった。
頭が沸騰しそうだった。
ぷしゅーってなりそうだった。てかなった。
木村くんんんんんんんん!!!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます