そのあとのはなし。

けしごム

理系くんの実証実験①



こんにちは、川瀬今日子です。

高校2年生です。

・・・ただす けいくんの彼女なんです!!!

ちなみに、付き合って今日でちょうど2ヶ月が経ちました。

まだ手を繋いだことすら1回しかないけど幸せハッピーライフを送ってますっ。

私が告白した日に抱き締めてもらったとき以来(キャッ///)、そういう恋人みたいなことをできてないことはちょこっと物足りないけどただすくんはそういう人だし不満とかにはなってないかな。


そして毎日、昼休みはただすくんとふたりで物理室か化学室で実験をしています。

ふたりで、というか私は理くんの手伝いって感じだけど。


そんな、ふたりきりの穏やかな時間が大好きなんですっ!!

理くんの真剣な横顔とかカッコよすぎてくらくらしてくるし、ふにゃっとした笑顔も普段とのギャップがあってすごく良いです。

わたし、こんなに幸せでいいんでしょうか~~~。むふふふふふ。

おっと、のろけまくってごめんなさい。なにしろ、私にはのろけられる人がいないのです(友達少ないだけ)。



今は昼休みで、ふたりで化学室にいるのですが・・・。


「うわあ、きれい!」

何の実験なのかはまっっったくわかってないけれど(理くんは説明してくれるけど理解できない)、とにかく目の前にあるものがキレイなんです。

試験管に、寒天となんだかよくわからない液体と銅線を巻いた鉄くぎを入れたら、なんだか薄い青色の膜のようなものが鉄くぎを覆っていて、なおかつ銅線のまわりは赤っぽくなっているんです!

えええっ、なんだこれ、すごい!

なんというか神秘的な感じ。

「でしょう?これはね、酸化還元反応がうんたらかんたら・・・」

理くんの説明は今日も今日とてまっっったく理解できないわけですが、すごい!最近の実験では1番面白い!

「なんか気に入ってもらえたみたいで良かった。

ちなみに言っておくけど、これ、普通に高校範囲の内容だからね?受験で使うからね?」

ちょっと意地悪な笑みを浮かべて私を見下ろす理くん。

と、とてもカッコ良いです・・・っ!!

ってええええっ、そうなんですかあ!?

「そそそ、そうなんだ・・・、が、ガンバリマス・・・。」

じゅ、受験生になってからガンバリマス。

(といってもあと1ヶ月したら受験生)

「僕がもう少し上手に説明とかできればいいんだけどね・・・」

わわわ、そ、それは私の理解力がないだけだから!!

先生の話だって理解できてないし!(これって大丈夫か?)

と、というかですね、理くんに見とれてまともに説明聞いてないと言いますか!

い、いや、聞いてるんだけどついつい理くんを見るのに夢中で耳があんまりちゃんと働いてくれてないだけと言いますか!

あれ、でも、理くんの声かっこいいなあ、なんてぐふふふっと思ってるから耳はちゃんと働いてるのか。

働き方を間違えてるのか。

「理くんのせいじゃなくて私に理解力がないだけだから!気にしないで!!」

「いや、僕の説明がヘタなんだよ。

昔から、何かを人に教えるのがヘタなんだよね、僕。」

おおお、ということは大学生になって塾の講師だの家庭教師だのはやらないってことですかね!?

そうですよね!?

ということは!!!

塾とか家庭教師先の生徒に【理先生、カッコいい~♥】とかって思われなくて済むってことですよね!?

そういうことでいいんですよね!?

・・・っていうかわたし、自分のことしか考えてないじゃないか、ばかーーーっ!

だめだ、ちゃんと理くんのことを考えないと!!!

「あれ、川瀬さん?」

いけないいけない、ぼーっとしてしまいました。

「あ、ごめんね。

理くん、説明ヘタとかじゃないよ!

前の、ほらなんだっけ、中和滴定のやつ、分かりやすかったよ!!」

そうそう、唯一わたしが理解できたのが、中和の話だったんですよ。

で、でもね!?理くんは、説明ヘタじゃないと思う。うん。本当に。

私に化学の知識が著しく欠けてるだけ!

「そっか。

ありがとね。」

で、でました、この笑顔ーーーーっ!

キューーーーーンっっっ!

モウダメ。川瀬サン昇天しそう。

「ね、川瀬さん、今日で最後にしよっか。」

・・・へ?

な、何をですか!?

わわわ、別れるってことですか?

う、うそやめてーーーー!

「・・・え?」

「昼休みにこうやって実験するの。」

ふう。そういうことですか。

ひとまずほっと胸を撫で下ろす。

と、とは言いましてもですね、やっぱり私が無能だからですよね!?

そうですよね!?

ご、ごめんなさいいいいいいいい!!!

正直、たしかに実験の内容は理解できてないですけど、この時間とてつもなく好きなんですよ!!!

このために学校に来ていると言っても過言ではないくらいなんですっ!

わからないなりに、実験器具洗ったりいろいろしてたんですけどね!?

やっぱり、ちゃんと実験についてのトークができる人がいいんですかね!?

そうですよね、そうですよねえええ!


そうして私の中を嫌な妄想が駆け巡る。

どうしよう。理くんが大学に行って頭が良い理系女子リケジョと恋に落ちたら!

捨てられますよね私!?

というかそもそも、理くんは私のどこが好きなんでしょうか?

私に理くんに好きになられる要素とかあった?

いや、なくない!?

やっぱりあれですかね、1番話す女子だからですかね?

実は理くんが私に抱いている感情は恋愛感情じゃなかったりして!

ひえええっ、ありえる!十分ありえる!

ただ単に、仲が良いから恋愛感情だと自分で思い込んじゃってるみたいな!

理くんならありえる!ありえますうううう!

だって、なんかよくわからん仮説とか立てて私の気持ちを推し量ろうとしたぐらいだもの!

恋愛感情がどんなものかとかよくわかってないんじゃあ・・・?

「川瀬さん?」

いけないいけない、またまたぼーっとしてしまいました。

「い、いいえ、なんでもございません・ ・・」

ど、どうしよう、実験やめる理由とか怖くて聞けない!

これからもやろうよ、なんて言えない!

だって多分、原因私だし!!!

「ならいいんだけど。

なんかちょっと最近、川瀬さん、元気ないっていうか、様子がおかしくない?

ごめんね、今までこんなのに付き合わせちゃったからだよね・・・?

ごめん、僕なんにも考えられてなかったね。」

ありゃ、なんだかこれはあれですな。

告白のときと似たパターンな気が・・・。

というか元気がないように見えたのって、あれですよね!?

ただ単にドキドキしすぎて上手く喋れなかったりまともに理くんと目を合わせられなかったりしたせいですよね!

「ち、違う、違うよ!

な、なんといいますか、あの、えっと、変に意識しすぎちゃってたと言いますか・・・、理くんとふたりという状況に緊張してたと言いますか・・・、

と、とにかく!

私は理くんとこうやって過ごす昼休みはとっても好き!

私、理系科目苦手だし、正直、あんまり実験内容とか理解できてないけど、それでもこの時間が好きなの、

私が全然役に立ててなくて実験とかするのやめるのならそれはそれでいいんだけど、気をつかってくれてるのなら、それはあの、大丈夫です・・・気にしなくて大丈夫、です。」

は、恥ずかしいけど、こういうのはちゃんと言わないと、ね・・・。

にしても恥ずかしい。

「そ、そうだったの?

川瀬さん、僕と付き合ってからも今までと全然変わらなかったし、意識してるの僕だけかと・・・。」

心の底から驚いたというように言う理くんに私が拍子抜けする。

えっ、私ってそんなに顔に出てないのか。

というかというかというか!!

理くんも意識してるんですかっ!?

ひょえっ!?

理くんこそ、全然そんな風に見えませんけど!!!

ま、待って待って待って、嬉しすぎる、嬉しすぎます。

「そ、そうなの?

理くんこそ、全然そんな風に見えないけど・・・」

「それは頑張って抑えてるからだよ」

ちょっ、えっ、目の前で理くんが照れくさそうにしてるのですがっ!

可愛いいいいいい!

ほんのりほっぺが赤くなってるし!!

か、かわいすぎる、尊い!!

「・・・・・」

もはや川瀬今日子、なにも言えません。

脳内大パニックでございます。

「か、川瀬さん!?

ごめん、引いた!?引いたよね!?」

「ま、まさか!

た、理くんがそんな風に思ってくれてるなんて思ってなかったから嬉しすぎてちょっとフリーズしてました・・・」

ほっとした表情をしたと思ったらますます理くんのほっぺが赤くなってきて、うわあ、ちょ、どうしよう。

嬉しすぎる、なんていうか、理くんが赤くなってる原因が私だってことが嬉しい!

「僕、正直、もう少しで川瀬さんにフラれるかと思ってた。」

ぽつりと呟く理くん。

わわわ、私ってば、なんてことを・・・!

理くんを不安にさせていただなんて!

「ええっ、そ、それはないそれはない!

というか私こそ思ってたよ!!

理くん、理系科目できる女の子とかの方に行っちゃうんじゃないかって!」

私が全力で否定したら、

「それもないよ!

そんな、理系科目がどうのこうのなんて、全然関係ないから!

僕が好きなのは川瀬さんだから!

好きな人と、勉強の話で盛り上がりたいなんて思ってないよ、僕」

そ、そうなんですかあああ・・・。

待って、安心しすぎてへたりこみそう。

「よ、良かったあ・・・。」

私が情けない声を出したら、理くんがまた、あの、ふにゃっとした笑顔で私を見た。

いや、あの、かっこよすぎるので!

心臓に悪いです!

「じゃあこれからも、一緒に昼休みいてくれるの?

・・・進級して、もしクラスが別になっても。」

「もちろん!もちろんです!

ぜひご一緒させてください!」

「あはは、なんでそんなにかしこまってるの。」

声をあげて笑う理くんにつられて私も思わず笑みがこぼれる。

「ね、川瀬さん」

背の高い理くんが、腰をかがめて私の顔に自分の顔を近づける。

ちょ、近い、近いです!

「な、なんでしょうか・・・」

「ふふっ、


好きだよ。」

・・・・・。

どうしよう。倒れそう。

「・・・わ、わたしも理くんがす、うわっ」

全部言い終わる前に、理くんに抱き寄せられた。

ドキドキしすぎて心臓が爆発しそう!!てかする!

助けて!!!

なんて思っていたら、

「ね、明日はさ、ピクニックいこうよ」

・・・へ?

はい?

明日、普通に学校あるんですけど。

理くんと理くんの香りに包まれながらも突然冷静になる私。

え?

「昼休み、ピクニック行こ。」

「え?」

「本当は昼休み学校抜け出すのダメらしいけど、けっこうみんな抜け出してるし。

うちの学校ユルいから大丈夫だと思う。

すぐ近くに公園あるじゃん。

そこで一緒にお昼ご飯食べようよ。」

「えっ、いいの?

あれ、実験は?」

「いいんだよ、そんなの。

じゃあ決まりね。」

「うん!!!」

理くんが平気で校則破るとは意外だったけれど、たしかに実際、抜け出す人は多いし私も抜け出したことあるし、そのうえ、抜け出したとき先生に見つかったけどなんにも言われなかったしOKだね!

「楽しみだね、理くん!!!」

「うん、僕も。」

うふふってにやけてたら私を抱き締める理くんの腕の力が緩んで、解放されたと思ったら、

「んっ!?」



・・・キスされました。


うわあああああ、心臓がもたない!!!





            (おしまい)

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