襲撃事件の真相2

(お〜い♡ ウチと変わって〜♡♡)


少年の内側のずっと奥底にあったユウナの魂が、プニプニし始める。

そして、ずっと小さくコチコチに固まっていた魂が、触れるだけで ぷるん♡ と揺れるようなプニプニしたオーラに変化し、少年の内側で弾けた。


 

にぱ〜っ♡ にぱにぱぁぁっっっ♡♡♡♡ どっぴゅんっ♡♡ びゅるるるるるるっっ♡♡♡



ユウナの魂は、少年勇者の魂を包み込むように少年の内側に広がり、彼の体中に染み渡り満たしていった。

不思議な温かさが少年の内側に溢れてゆく。


…それはかつて少年が、5年前にも経験した感覚だった。

幼い頃の母の胸に抱かれたときのような…母親のお腹のなかにいた頃のような……そんな不思議な安らぎを感じていた。


体の中で、自分ではない自分が目覚めるような感覚……。

目の前で母親を父親に殺されたあの日……少年が意識を失う直前に感じた『感覚』とそれはそっくりだった。



ゴゴゴ……ゴゴゴ…ゴゴ………。



突然、少年の瞳が赤みを帯び魔力を秘めた『緋眼』になる。

そして、体から吹き出す魔力の波動が傷ついた肉体を回復させ、再び少年の体に活力を沸き起こさせる。


「なっ!?なんだぁっ!!???」

技のモーションの途中で、驚きの声をあげるアーガルド。


どんだけ大振りで無駄にモーションがデカい技なんだよ!と御思いだろうが、これでも彼にとってはディレイタイムの短いコンパクトな技な方だった。


広範囲技の『ドランク・バーサーカージェネラル(酔っ払い暴れん坊将軍)』など、剣を使った『ぐるぐるバット』で嘔吐(えず)きながらその場で10回転した後、千鳥足で辺り構わずぶん殴るのだが、技の発動まで1分くらいかかるのだ。

敵味方関係なくぶっ殺すために、今ではサイファーに禁止されている幻の技である。


「瞳が魔族のように赤く!? それにこの膨大な魔力は何だっ!?」

立ち上る砂煙に目を細めながら、サイファーが警戒し身構える。


「ぐわぁぁぁっっっ!?」

ユウナの体から迸る魔力の波動に、後ろに吹き飛ばされるアーガルド。


吹き飛ばされつつも、なんとかヨロヨロと立ち上がるとアーガルドは驚きの声をあげた。

そして一言……。


「………お前、誰だ?」


一瞬にしてアーガルドの目の前にいた『少年』が『少女』に変化していたのだ。

見知らぬ少女の登場に、呆然とする魔族たち。


神々しく美しい造形の顔に、禍々しいまでの魔力を秘めた血のような赤い瞳。

神とも悪魔とも見紛う、幻想的な姿。

男物の服の上でほんのりと膨らんだ、控えめな胸……。


その美しい少女が、最高に眩しい笑顔で花咲くように微笑むと、ビシッっとアーガルドを指差す。

そして一言……。



『にゅう〜ちゃれんじゃぁ☆降臨!にぱっ♡』



目元に指でピースサインを決め、元気一杯に片膝を上げた若さ溢れる決めポーズ。


八重歯がキラリと可愛く光る目元のアップが画面中央にカットインで入ると、

少女の頭上に格闘ゲームでおなじみの緑色の体力ゲージが現れる。


そして、どこからか戦いのゴングが鳴り響いたのだった。

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