見慣れた、天井(おしり)
勇者の祠を目指すユウナ達の旅は、魔王村を出てからすでに2週間が経過していた。
様々な国を経由し、最果ての地にある勇者の『試練の祠』を目指す長い旅。
ユウナの飛行魔法で飛んでいけばいいのにとツッコミたくなるが、そんなことは邪道だとばかりにテクテクと歩く勇者様一行。
当然、いつでも宿がとれるわけではなく、時には危険な荒野で野宿をすることもある。
魔獣たちの徘徊するフィールドで、キャンプファイヤーでマシュマロを頬張ったり、BBQでスペアリブを焼いたり、大人買した花火でワイワイとハシャいだり、ロウソクを灯し怪談話大会を開いたりと…それはそれは過酷な旅の連続だった。
今夜も川辺で炊飯し、アキバ特製『りんごとハチミツ恋カレー』を、「りんごとハチミツいらねぇよ!」とユウナとリジュが散々ブーイングしながら皆でお腹いっぱい食べたあと、旅の汚れをたまたま偶然に湧いていた天然温泉で洗い流し、お気に入りのパジャマに着替えてそれぞれの寝袋の中へ。フクロウの優しい鳴き声を子守唄に、皆で「今日も楽しかったね♡」と就寝に入った。
壮大な大自然の中、夜空を見上げれば、手を伸ばせば届きそうなほどの満点の星。
数多の星座が瞬き、今夜も太古の神々のおとぎ話を囁き聞かせてくれていた。
……ユウナ以外には。
「また……見慣れた、天井(おしり)だ……」
ユウナは、目の前にぶら下がるプニプニで大きなお尻を指でツンツンした。
「んっ♡」と、ハンモックで眠るシオリが、寝ぼけながら色っぽい声をあげる。
ユウナの真上にハンモックで寝ているシオリのでっかいお尻が邪魔で、ユウナには星空を堪能することができないでいた。
野外で睡眠をとるときには、勇者を守るためにユウナを取り囲むようなフォーメーションで眠ることになっていた。
右には、生活感丸出しのゆるいジャージに着替えたノーメイクすっぴんの聖騎士のアキバ。
左には、ピンク色の可愛いパジャマのお腹をはだけさせ、おへそ丸出しで眠るリジュ。
そして真上には、パンティ姿に男性モノの大きな白ワイシャツを羽織った、オッパイ担当の魔法少女のシオリ。
皆、屋外で野宿をしているというよりも、自宅のリビングでくつろぐような格好だった。
ユウナに至っては、サメの形をした着ぐるみに全身を包んでいるのだから、もはやリビングですらない。
「ちぇっ。ケツが邪魔で、せっかくの星が見えねぇじゃん…」
ユウナはシオリのお尻に当てた指を、くるくるさせながらボヤいた。
それに反応するように、「あひっ♡」と眠ったまま喘ぎ声をあげるシオリ。
柔らかいお尻の肉に指先を押し込みピンと軽く指を弾くと、シオリのお尻の柔肉がぷるんと震えた。
そのプルプル感は何故か、あの日の……勇者襲撃事件のときの『覚醒』の感覚をユウナに思い出させた。
あのとき感じた、軽い目眩。
そして、男勇者の中で女勇者のユウナが『覚醒』したあの瞬間を。
ほわん ほわん ほわわわわ〜ん。
ユウナは、シオリの丸みを帯びたお尻を見つめながら、なぜか勇者襲撃事件のときの回想シーンへと没入していった…。
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