お尻・おしおきタイム
シオリが精神世界でもう一人の自分と対面していた時間は、現実世界では一瞬だったようだ。
魔法学院の中央校舎屋上で、抱きかかえていたシオリの体が光の繭に変化してしまい呆然としていたシモンだったが、次の瞬間には押し寄せる魔力の圧に押され片膝をつく。
「ぐぉおぉぉっ!!」
光の繭がひび割れ、薄いガラス細工のように粉々に砕け空中に舞い散る。
そして中から、少女の人影が現れた…。
頭から生えた、『く』の字に折れ垂れ下がった耳。
お尻からは『の』の字にくるんと丸まった尻尾。
手には、『V』の字の蹄のついた大きなグローブ。
そして顔には『豚鼻』のつけ鼻。
…そこには、全裸の上にキングサイズのオーバーオールを着たシオリが、豚のコスプレをした状態で立っていた。
「ど……どうして…豚の…『コスプレ』なんですかぁ!?(泣)」
ドM感満載の泣き顔で、大きくブカブカに胸元の空いたオーバーオールの前を隠し、体をクネらせるシオリ。
先ほどまでのショーツ1枚だけのほぼ全裸状態よりはマシだが、これはこれでマニアックなイメージビデオ臭が漂う。
真正面以外の角度からなら、谷間や横乳が丸見え状態で、ちょっと動いただけで肩紐がズリ落ちてしまう。
もしドSの人がこの場にいたら、きっと『このイヤらしい体をしたメス豚野郎!!』と罵られていただろう。
だが、シモンの反応は違っていた。
バシィッッッ!!!!
シモンの平手がシオリの右頬に飛んだ。
「……え?」
突然強烈な平手打ちをされ、シオリは地面にうずくまった。
しばらく呆然とした後に、ジンジンと焼けるような熱い痛みが頬を襲った。
打たれた方の耳が、キーンと耳鳴りしていた。
「な………んで………?」
驚きと痛みで、シオリの両目から本気の涙が溢れ流れた。
両親にも本気で打たれたことがなかったシオリは、何が起こったのか理解できなかった。
「い、痛い………痛い…よぉ……うぅ……(涙)」
男性の硬く大きな手の平での、強烈なビンタ。
シオリには、顔の右側が倍ぐらいに腫れ膨らんでしまったように感じた。
「………汚したな…」
許せないものを見る目で、シモンはうずくまるシオリを見下ろしていた。
「先生、言ったよな……?
シオリは、五条あやねちゃんにソックリなんだ……って。
なのにダメじゃないか? そんな…ブタみたいな醜く卑しい格好しちゃ……」
シモンがシオリの髪を鷲掴みにし、抜けちぎれるほどの力で無理やり立たせた。
「いゃぁっっっ!!痛いっ痛い!!」
そして、シオリの顔を自分の顔の高さまで引き寄せ、臭い息で低く呻くように言った。
「……お前には、教育的お仕置きが必要だ…」
シモンはその場でしゃがみ、シオリの体を自分の膝の上にのせると、四つん這い状態になった彼女の大きなお尻を思いっきり『バァッチンッ!!!』とブッ叩いた。
「ひぃぎぃぃぃっっ!!!??」
尾骶骨がへこむほどの強い衝撃がシオリのお尻を襲い、ぶるんぶるんとお肉を弾き揺らした。
それは古から伝わる体罰……『お尻ぺんぺん』だった。
「どうした、ブタなんだろ?ブヒブヒって許しを請えばどうだ?
さもなければ……悪い子には、とっても痛い躾(しつけ)をしてやるぞ…」
「…いやぁ!…やだ……許して先生っ!!ゴメンなさい!!ごめんなさいィ!!
……うぅ………ブヒィ…ブヒ(泣)」
恥もプライドも捨て、なんとか逃げ出そうとジタバタと暴れるシオリ。
魔力暴走状態のシモンの手加減を知らない一撃は、もしシオリが魔法少女に変身していなければ、大怪我ではすまないほどの衝撃だった。
バッチィィィンッッ!!
「んん゛あ゛ひぃいいぃっっ!!!!」
それが再び振り上げられ、シオリの肉厚で大きなお尻に降り下ろされる。
臀部の肉を震わせ背骨を軋ませるほどの、工事現場の重機のような凄まじい一撃。
あまりに強烈なその衝撃の伝導に、シオリとシモンの足元を中心にして、空中庭園の石畳にヒビ割れが走る。
「ぎぃぁっ! い、イヤ…!ヤダ…ヤダッ!?
お、お尻壊れちゃう!?だ、誰か助けてっ!!!………パパ…ママァ!だずけ、てぇ!!!」
オーバーオールの中では、彼女のお尻が皮膚が裂けそうなほどに赤く腫れ上がっていた。
あまりの恐怖に目眩がし失禁しそうになりながら、シオリは泣きじゃくり助けを求めた。
それでも容赦なく、次の一撃の右手がシモンの頭よりも高く振り上げられる……。
……だが、その彼の手がシオリのお尻に振り下ろされることはなかった。
「ブタをブタないでっ!!」
ブタをブタ……いかにも『それが言いたかっただけ』感のあるセリフとともに、突然現れた女の子の小さな拳が大きく唸り、シモンの顔面を強打し左中間のレフトとセンターの間へとかっ飛ばす。
そしてその間に、三塁ランナーがホームへ。
「がぁはぁっっ!!」
ミシミシと音をたて、吹っ飛ばされたシモンの体が伝説の樹の根元へ減り込む。
その衝撃で空中に吹き飛ばされ、クルクルとバランスを失い回っていたシオリの体を、その少女が空中で見事にキャッチ。
そして、お姫様抱っこの体制でスタンと地面に着地を決めた。
その光景はまるで、美しいの王子様に抱きかかえられるメス豚のお姫様…。
アンバランスで醜くも美しい醜美の世界に、バックの背景もコッテリとしたバラが咲き誇った。
「あ、あなたは…誰なの?」
自分よりも小柄な少女の腕のなかで、シオリは凛々しく佇む彼女を見上げ訪ねた。
「ウチ、勇者のユウナ!! クラスの皆には内緒だよ!!!」
くったくのないとびきりの笑顔に、シオリは思わずドキドキしてしまった。
そして勇者ユウナが、にぱぁ♡とポーズを決めながらモンの前に立ちはだかる。
勇者ご一行、ようやく登場…。
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