アイドル!シンデレラ!!サンシャイン!!!

「イヒヒッww お嬢ちゃん、アイドルになりてぇのかい?

 けどよぉ、芸能界ってのは華やかなだけじゃぁ……ねぇんだぜぇ?」


ユウナはニタニタとイヤらしい笑みを浮かべ、品定めしながらリジュの周りをまわった。

そして舐めるように、じっとりと彼女の体に視線を這わせる。


「あ、あのっ……私っ!?」

突然現れた、見るからに如何わしい悪役プロデューサーに、素直に緊張するリジュ。

足なんて可哀想なくらい、子犬のようにプルプルと震えていた。


「へへっ……まだ『キレイな体』してるじゃねぇかwww」

ユウナが、エロ親父のようにリジュの後ろから肩に手をまわす。


「んん〜♡ まだまだ、ねんねの匂いがするなぁ♡♡♡」

そして、少女のその細い首筋に顔を這わせ、クンクンと少女の匂いを嗅いだ。


「ひぃっ!?」

エルフの少女は目に大粒の涙を浮かべ、わかりやすいほどビクンっと体を強張らせた。


「ククッww 芸能界ってのはなぁ、怖いところなんだぜ。 

 お嬢ちゃんアンタ……カラダ張る覚悟は、あるのかぃ?」


顔面に濃い影を浮かび上がらせ、ユウナはニタァッと悪そうに笑った。

それはまるで、エロゲに出てくるヒロインを手篭めにするクズ野郎役の顔だった…。


「か、覚悟は……出来てますからっっ!!!」

震える涙声で、それでもリジュは健気にそう答えた。


「そんじゃ、お嬢ちゃんの覚悟……オジさんに見せて貰おうかぁwww

 奥の部屋行って、まず着てるもの…………全部脱げや………」




◇◆◇◆◇◆




「わぁっ♡♡ 本当にアイドルみたいっ♡♡

 本当にこの服、貰っちゃっていいんですかっ!?」


奥の部屋でユウナとリジュは、お互いの着ていた服を交換した。

脱げとリジュに命令しといて、部屋に着くなり脱ぎ始めたのはユウナの方だった。


「いいって、いいって!そのフリフリ衣装、ウチの趣味じゃないしぃ!!」

そういってユウナは、彼女の着ていたタンクトップとローライズジーンズに着替えた。


「うは♡ リジュちゃんって、足長げぇ!!」

ユウナよりも背の高いリジュの着ていた服は、どれも彼女には大きかった。


タンクトップは上半身が薄いユウナが着ると、ちょっと屈んだだけで胸元がガバッと開き、ノーブラおっぱいが愛らしく『こんにちわ』してくる。

ローライズジーンズに至っては、ウエストの細いユウナではさらに低い位置までズリ下がり、お尻半分ぐらいまで下着が丸出しだった。


「ズボン長いから裾上げしよっと。 えいっ!!」

……と、裾どころかホットパンツ並みに股関節の付け根ぐらいまでバッサリとぶった切るユウナ。

ぶった切って捨てるズボン生地の面積は、残っている部分よりも切り落とされたほうが明らかに大きいという逆エコロジー。


太もも丸出し。

下着半出し。

だらんとサイズの大きいタンクトップがワンピースがわりに股下までを隠してくれているが、それでもちょっと動くと素足が股関節近くまで露わになる。


それなのに『黒のニーソックス』という、ある意味攻撃力高めの出で立ち。

若さゆえの恐れを知らないオリジナルティ・ファッション………。


「あの、ユウナ様……もうちょっと、控えめなズボンにしませんか?」


「いいじゃん!若い体のエロスは、町の皆さんにもおすそ分けしなきゃっ♡♡」

そう言って、にぱぁっ♡と笑ったときには、ヘアスタイルもしっかりアップし、ギャルメイクもモリ盛り完了済みだった。


「だ、だって! それ、元は『私』の下着なんですからね!!」


魔王村を出るときに、ロリータドレスにノーパンではまずいと、アキバの着替え用の下着をユウナに渡したのだ。

その水色の横縞パンティが、ウエストから50%以上もハミ出していた。


「えっ?この下着って、見られると減るの??」


「減ったりしませんけど…」


「じゃ、いいじゃんw」


「もぉぅ!!何だか自分の下着を見られてるような気がして恥ずかしいんですよ!!(///)」




◇◆◇◆◇◆




そんなこんなでグダグダやっている間に、もうお昼時になっていた。

冒険者の酒場は、いつの間にか昼食をとりに来た冒険者でいっぱいになっていた。


ユウナ達は窓際の席に座ると、それぞれ好きなものを注文しランチタイムにすることにした。

お腹も空いていたことだし、とりあえず食事をとりながらリジュの話を聞くことに。


「私の家は、国から雇われて暗殺をする『暗殺拳』使いの家系なんです」


「あ、暗殺拳っ!!」

年頃の女の子の口から飛び出した物騒なワードに、思わず驚きの声をあげるアキバ。

そういえば履歴書の特技の欄に『権力者の暗殺』と書いてあったのを思い出した。


「私は幼い頃から、色々な暗殺拳の技を父に教わりました。そして、全ての技を習得しました。

 でもそれは……、私の求める『暗殺拳』とは何か違ったんです……」


リジュは、グッと持っていたフォークを握りしめる。

そして、悔しそうにこう言い切った。


「だって、『可愛く』なかったんですっ!!」


「………は…?」

口に運ぼうとしていたチキンを停止させ、アキバが思わずそう聞き直した。


「私は『可愛い暗殺拳』を求めて、様々な書物を調べました。

 もっとキュートで、もっとキラキラ素敵に輝くような『暗殺拳』はないかと……。

 そして、出会ったんです……!!」


リジュは言葉通り瞳をキラキラと輝かせ、興奮気味に言った。


「暗殺拳法・アイドル総選拳(そうせんけん)にっ!!!!」


うっとりと、憧れの表情をするリジュ。その目はまさに、夢見る少女の瞳だった。


言っておくが、総選挙ではない…総選『拳』だ。『挙』と『拳』の違いは大きかった。


「この世界には、かつて『神7(セブン)』と呼ばれた拳法の使い手がいたそうです!

 48人いるアイドル総選拳の使い手の中でも、最強を誇った7人のアイドル!!

 アイドル総選拳(そうせんけん)を極め、長らく頂点に君臨したという……『伝説の7人』です!!!」


興奮し過ぎたのか、彼女は椅子から立ち上がり、握りこぶしを掲げアキバ達に熱弁する。

そして今度は、その瞳にメラメラと熱血の炎を燃え上がらせて彼女は叫んでいた。


「私は彼女達のような、伝説のアイドルになりたいっ!!

 歌って踊って殺せる、素敵なアイドルになりたいんですっ!!!」


アキバは「へぇ、そうなんだ」と困惑した顔でうなづくと、停止させていたチキンを頬張ったのだった。

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