スター☆誕生!!

最後のガチャコインに願いを込めて、アキバがガチャポンにコインをセットした。

これが正真正銘のラストチャンス、191回目のトライだった。


「左手は……そえる…だけ……、

 ……左手は……そえる…だけ…………」


何の呪文かは知らないが、アキバが目を閉じ神経を集中させる。

そして、ガチャレバーをガチャガチャと回した。



ガチャガチャ、ガチャ カコン…。



今までとは違う音をさせ、中から転がり出てきたのは、見たことのない虹色に輝くカプセルだった。


「に、虹色カプセル…きたぁ!!??」

明らかにテンションが上がったアキバが、興奮気味にカプセルを拾い上げる。


「さっきの『ワンにゃ』の[★星5]でさえ金色のカプセルだったのに、虹色っていったい[★星]いくつなの!?」

よく見るとカプセルは、鈍く青白い光彩エフェクトを放っていた。

ごくりと生唾を飲み込むアキバ。


期待いっぱいにカプセルを開けると、意外にも中に入っていたのは番号札ではなく、丸められた冒険者登録用紙そのものだった。


「えっと…『リジュ』………?

 ……って何これ、どういう事!?」


「ああぁっっ!!それ、アタシィ!!!!」


ガラッっとガチャ脇の小窓が開き、エルフの少女が元気よく顔を出した。

アイドル志望少女のリジュだった。


「えぇっ!? 何なにっ?? 私オーディションで選ばれたんですか!? もう合格!?」


お散歩前の犬ほど興奮したエルフの少女が、小さな小窓から顔を出しハァ、ハァする。

その顔はエルフ族らしく整っていたが、どこか愛嬌があり愛らしかった。


「アナタが『リジュ』!?……いえ、それよりも……[★星]はいくつなの???」

まずは何で冒険者登録用紙がそのまま入っていたのかとか、何の職業なのか聞くべきなのだろうが、今はもうそんな事など関係なかった。

アキバの頭の中はもはや、食べ○グを気にする飲食店オーナーほど[★星]のことでいっぱいだった。


「[★星]?……あぁ、星ですねっ!!!」

見えない小窓の向こう側で、ポンと手を叩く音が聞こえた。


そして「待ってて下さい!うんしょ!よいしょっ!!」と、その小さな窓へ体を滑り込ませる。


彼女は体が異常に柔らかいうえに、関節も自由に脱着可能だったようだ。

キモい動きでクネクネと体を捩らせ、少女の体は小窓を通り抜け店内に到達した。


「ほい…っと! えへへ!お待たせしました!!」


目の前に立ったリジュという少女は、ユウナより少し背が高いエルフの女の子だった。


真っ白のタンクトップにローライズジーンズというラフな格好。

年齢は中学生くらいだろうか、ユウナよりもリジュの方が若干年下に見えた。


「私の[★星]は…ジャジャ〜ン!!これで〜すっ♡♡♡」

少女はタンクトップの襟元を指でグイッと引き下げると、ほどよく育った胸の谷間を二人に晒した。


Cカップの穏やかに膨らんだ乳房を挟み、そこには…7つのホクロが『北斗七星』の形に並んでいた。

あらまぁ♡、発育盛りのユアーショックであった。


「えへっ! 小さい時に占い師の人に言われたんです!あなたはスターの[★星]を持ってるって!!」

目をキラキラと輝かせ、純粋な心で少女は語る。


「そしてそれは、[★星7]の超スーパーウルトラ激々レアなんですっ!!!」

キラキラの大きな星が舞う演出効果をまとい、エルフの少女は満面の笑みを振りまいた。

これぞ天性のスターのオーラ。


(いや、でも…[★星]が7って……)


しかし……あまりのリジュの穢れなき笑顔に、逆にどこか疑いの目で見てしまう大人のアキバ(24歳)。

アキバは眩しそうに手をかざし、逆光でキラキラ光るリジュを見つめた。


「本当なの?今まで[★星7]なんて冒険者、聞いたことないわよ?」

ジト目でリジュを見つめてから、手に持ったシワクチャの冒険者登録用紙を再確認した。



-------------

★リジュ

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種族:エルフ族

年齢:13歳

身長:145cm

B :78cm(Cカップ)

W :53cm

H :79cm

趣味特技:読書や、権力者の暗殺

志望動機:夢を与えるお仕事に憧れて♡

アピールポイント:元気が取り柄です!頑張ります!!

★星:★★★★★★★



……本当だった。

★星の欄は自分で記入することはできず、魔法によるステータス値判定によって自動で記載される。

そもそもその部分は記入欄外で、リジュも未記入だった。


「ほ、本物の[★星7]だわっっ!キタァァーーー!!」


ガッッ!!!……とリジュの両手を握り強く握手すると、アキバは「ありがとう!助かったわ!!」と心の底から感謝した。

仲間を得た喜びよりも、軍の上層部に「ガチャで軍資金スッちゃいました!」と報告しなくて済んだことに、アキバはホッと胸をなでおろした。


「は、はいっっ!!」

そんな大人の事情は露知らず、アキバと強い握手を交わすリジュ。


「これから一生懸命自分を磨いて、立派な『アイドル』になりますっっ!!!

 よろしくお願いしますっ!!プロデューサーさんっっ!!!」

 

そう言ってリジュは、深々と頭を下げた。


「へっ?…アイドル??………プロデューサー??」

顔に『?』マークを浮かべ、きょとんとするアキバ。


アイドルのオーディションだと勝手に思い込んでいるリジュと、事態を飲み込めていないアキバ。


「ご、ごめんなさい…ちょっと言っている意味がわからないわ?」

目の前の少女の言葉の意味を理解できず、アキバはただそう言葉を返すしかできなかった。


しかし、そんなとき……。

困惑しているアキバの肩をポンと叩き、ヌッとユウナが後ろから顔を出した。


なぜか、真っ黒なサングラスを装着し『見るからに如何わしい悪役プロデューサー』の格好をして……。

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