ビッチギャル♡転生

その突然あらわれた少女は

年齢も絵本の勇者とおなじ十代半ばくらいに見えた。


「あぁー!おしりでてるぅ!!あははは!!」


一糸まとわぬ裸の少女を見て、

園児達がきゃっきゃと喜び笑い声をあげる。

おしりおならは、どの時代の園児たちにもツボだったようだ。


…しかし、マリアには笑えなかった。


笑うどころか、その幻想的な光景…美しすぎるその少女に、

マリアは呼吸を忘れて見入っていた…。


魔法陣から立ち上る光のベールに包まれ、

まるで神話時代の絵画のような人間離れしたその『美』に、

ゾッとするほどの感動さえおぼえた。


ドキ…ドキ……ドキ…ドキ……。


(…なんて……綺麗なの……)


マリアは、生まれて初めて『同性』の裸体に

ドキドキしていた。


細く白いうなじや、膨らみかけの緩やかな胸の稜線が、

自分よりもずっと年下の少女のはずなのに、

とても官能的でエロティックに見えた。


「……で、ほら坊主、お尻なんかよりコッチがさぁ、

 くぱぁっ♥て開くと、こんな色してんだよぉ〜www」


「あはははっっ!!お姉ちゃん、変なの!!!」

 

マリアがうっとりと放心している間に、

その美しい少女は園児たちとすっかり打ち解けて、

M字開脚で女体の神秘についてレクチャーしていた。


「んでお前ら、どうやってパパママから生まれてきたか知ってる?」


「ちょちょちょぉおぉっっっっっと!??待ってぇぇぇっっ!!??」


我に返ったマリアは、かぶりつきで見ていたマサトくんの目を両手で隠すと

そのままクルリと自分の背後に追いやった。


「ちょ、ちょっとあなた!何してるんですか!? 子供達の前で!?」


「えっとぉ? …保健体育の授業?」


「いけません!

 お、女の子が股間にモザイクなんてかけて、はしたない!!」


おっぴろげで何も隠そうとしない少女に、

マリアは逆に自分が恥ずかしくなる思いで叱った。


「そ、それよりもアナタ…何者なんですか!?」


突然天からイナズマとともに現れた少女。


その正体不明の少女にマリアは警戒しながら、

何かあれば自分が壁になれるように子供たちとの間で身構える。


「え? ウチ、勇者なんだけどぉ?」


「何を言っているの? 現在の勇者は少年で、男の子よ!」


「あぁ、さっき死んだよそいつw」


「…………え?」


「勇者ってほら、死ぬと教会で復活した『新しい体』に転生するじゃん?

 それウチなわけね♡」


「そんな!?…じゃぁ、勇者様が…女の子に?」


そうそう!といって手をぱたぱた振り、「ウケるぅ〜♡」と笑い転げる目の前の少女は、

マリアの年代女子には理解しがたいものがあった。


(いやいや、ウケるぅ〜♡…じゃねーだろ…)

年上に対しての馴れ馴れしい言葉遣いといい、

イラっとしたものがマリアに芽生える。


「んがふふっ!お主ぃぃ〜!!」


「うお!ビックリした!?お爺ちゃんいたんか!?」


突然、自分のお尻の真後ろで雄叫びをあげた老人に、

さすがの少女も驚きの声をあげた。


床板を突き抜け、地面に首から下が突き刺さった、

黒ひげ危機一髪状態の園長先生が、

つやつやの少女のお尻にめっちゃ頬ずりしながら言った。


「勇者殿が、死んだと申したな?(フガフガ)」

入れ歯をフガフガさせながら、目をカッ!と見開く。


そして、名残惜しそうに少女のお尻の下から這い出すと、

勇者と名乗った少女に向き直り問いかけた。


「勇者殿は今、王国軍の護衛のもと試練の祠に向かっていたはずじゃ…」


王国の屈強な兵に守られ、本来ならば安全なはずの旅だった。

それがなぜ、勇者は『死んで』しまったのか?


「それに勇者殿が死んでしまった場合、

 『元の体』が教会で再生し、その体に魂が帰る…つまり生き返りじゃ」


この村に勇者が現れて300年の間、

世の中は平和になり、勇者が戦死することも少なくなっていた。


それでも園長先生が駆け出しの神父だったころ、

一度だけ、モチを喉に詰まらせて死んだ当時の中年勇者が、

教会で復活する場面を目撃したことがある。


そのときも今と同じように稲妻が走り、

復活の魔法陣の中で、元どおりの姿で復活した。


その勇者は「ああ、死ぬかと思った」と言い、

迎えにきていた奥さんに、アンタこれからモチは2個までだからね!と、

お叱りを受けていたのを今でも覚えている。


教会の壁画に飾られた歴代の勇者の肖像画の中に、

モチを頬張っている食いしん坊勇者の肖像は、10代目の勇者ひとりだった。


園長は懐かしそうに勇者の肖像画を見上げ、

その勇者 彦摩呂の、生前のテカり光る笑顔を思い起こしていた。


勇者が死ぬのは、天命を全うした時だけ。


つまり寿命以外では死なないというのが、

勇者の伝説…言い伝えだった。


「して、お主……本当に、本物の勇者かのぉ?」


そう言って振り返った園長先生が見たものは、

人の話もそっちのけで、ギャルメイクに夢中の少女の姿だった。


「…て、ワシの話、聞いてた?」


「え?何ぃ? ウチ、今忙しいんだけど?」


今では珍しい、つけまつ毛二枚重ねのキャバ嬢かってくらい盛ったメイク。

頭には成人式さながらの大きな花が飾られていた。


そしてどこから用意したのか、園児の小さな制服を無理やり着た、

幼稚園児コスのギャル美少女がそこには立っていた。






次回[ ご対面 ]。

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