ご対面
勇者と名乗った少女が園児たちと同じ極小サイズの制服を、
いったいどうやって『着る』ことができたかは、不明だった。
よくあるタイプ(丸い白襟で水色)の幼稚園の制服は、いくら少女が小柄だといっても、
十代の少女が着れば当然ぴちぴちで、体のラインにあわせて限界まで伸びきっていた。
もはや、決戦用通園型プラグスーツのようだった。
容赦無くさらけ出された、健康的な真っ白い太もも。
丈の足りていない裾からは、動く度にチラチラとお尻や大事な所が見えそうになる。
さっきまでの丸見え状態の全裸より、
逆に見えそうで見えない今の方が何故かとても挑発的だった。
「悪りぃね、ボク!すぐ返すからさぁ、
ちょっとだけ、お姉ちゃんに服貸しといてねぇ♡」
そう言ってウインクすると、
ぱっちん♡とあごひものゴムを鳴らし、黄色い帽子をしっかりと頭にのせる。
園児から借りた白いハイソックスも、少女の足には靴下ぐらいの短さになり、
ふくらはぎにムギュッと食い込むゴムがエロい。
「うん、いいよ!お姉ちゃん!!」
フリチンで、ビシっと男らしく敬礼するマサオくん。
今週だけで、7通報シマシタ!をゲットしていた。
「うしし♡ 良い子♡ 良い子♡
あとで、いっぱいサービスしちゃるね♡」
そういうと少女はご丁寧に、黄色い通園カバンを肩からぶら下げた。
半ケツ出したギャル美少女のその格好は、かなり…というか相当マニアックだった。
「ま、待つのじゃ!お主、どこへ行く気じゃ!?
…てか、帽子とカバンいらなくねぇ!?」
まだ話の途中で礼拝堂から立ち去ろうとしていた少女を、
園長先生があわてて引きとめた。
「いやぁ、さっきからずっとガン飛ばしてくるあの女に
ひとこと挨拶してくっかなぁ〜って思って♡」
そう言って少女が睨みつけた方角はただの壁があるだけで、
勇者 彦摩呂の肖像がニコニコ破裂しそうにこちらを見ているだけだった。
「あの女って…誰のこと? あなた何言ってるの?
それよりも待ちなさい!本当にそんな格好で外に出る気!?」
シスター・マリアが信じられないという表情をして言った。
村の人が見たら、もはや痴女か頭の可哀想なユーチューバーにしか見えないだろう。
ソフトオ○デマンドの企画モノレベルだった。
しかし、制止するマリアの言葉をさらりと聞き流すと、
少女はそのまま礼拝堂の出口に向かい、外に飛び出してしまった。
「あぁ!ちょっと!帰らないで!
まだ、おたよりと連絡ノートも渡してないのに!!
もう!…はい皆さん!お姉さんが帰りますよ〜!」
「「先生さよ〜なら!お姉さん、さよ〜なら!!」」
去ってゆくギャル勇者に向かって、園児達の元気な挨拶が響いた。
幸い、教会の外の通りには、誰も通行人はいなかった。
無人の通りを、まだ朝露の香りを感じる肌寒い風がそよりと吹いて、
小さくツンと上を向いた少女のお尻を、チラリチラリとサービスする。
「うわw めっちゃ、こっち見てるしww」
外にでると、その『視られ(ガンつけ)』られている感覚が、
ジリジリと焼けるように鮮明になった。
少女はすぐさまその方向…村はずれの崖の方角に振り向くと、
遠いその視線の主をニヤリと睨み返した。
「待ってな。今、行くってば♡」
誰に対して発した言葉かはわからないが、
少女の口調は楽しそうだ。
『Joh◯ny's Tokyo Dome Performance ... Make it brilliant...(ジャニ○ズ東京ドーム公演 華麗に舞え)……』
呪文の詠唱をはじめた。
そして数歩歩き出す。
最後の一歩がふわりと重さを失い、ツゥと空中を真横に体が滑る。
『 wire flying (ワイヤー・フライング)!!!!』
次の瞬間には、大きく地面を蹴りつけ上空めがけて飛躍した。
天から光のワイヤーが少女の体を釣り上げ、華麗にアリーナ席上空を飛躍する。
見事な天界スタッフさんのクレーンさばき…いや、飛行テクニックで、
少女の体はぐんぐんと上昇し、村のはずれにある崖の側面に着地した。
スタッ。
「ふぅ。お待たんwww」
対比にして、スケール比は約1/27。
少女の27倍はあろう巨大な魔王が、
そのちゃぶ台ほどもある紅色の瞳で少女を睨みつけていた。
…そうここは、魔王が封印されている崖の上。
魔界の蓋(壁尻魔王)の真正面だった。
次回[呪いの代償]。
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