予言の勇者

「そこまでよ!魔王!!」


少女は遥か上空から舞い降り、

着地の瞬間、軽やかにくるり♡とスカートを翻し、

軽やかに地面に着地した。


その少女の姿は、十代半ばに見えた。


白い装束のような衣装で、

肌がみえそうな部分に控えめ程度のフリルがついた、巫女のような出で立ち。

その上に、軽装の白銀プレートを身にまとっている。


「魔王よ!!あなたにこの世界は渡さない!!」

ビシっと魔王を指差し、お仕置きよとばかり啖呵を切る少女。


そして剣を天高く掲げ、言霊により異界より『力』を召喚する。



『Nagoya shooting(名古屋撃ち)!!!!!』



昭和臭のする名の必殺剣技が、横殴りに大地をなぎ払った。

その瞬間、最前列の魔王軍の精鋭がバタバタと倒れる。


一振り、二振り…。

そのたびに、突進してきた魔王軍の前線のゴブリン兵達が積み重なるように崩れ落ちる。

一緒に切られた野鳥が無事なのは、どうやら『魔』を払う力を持った技だからのようだ。


一陣の風が走り去ったあとには、魔族で大地に立っているものはいなかった…。


「なっ!?あれは!? 予言にあった勇者なのか!?

 まさか、本当に実在したのか!?」 


突然の救世主の出現に、王国軍達すら言葉を失って立ち尽くしていた。


予言書にその出現が予言されてあり、

魔王復活を前に国をあげて探しても見つからなかった勇者。

それが今、目の前に立っていた。


「ば、ばかな?わが精鋭が全滅じゃと!?」

老魔族の爺ぃが、驚愕する。




『おのれぇぇぇっっっっ!!! 人間の分際でぇぇぇっっっっ!!!!』




怒り狂った声で、魔王が吠えた。

ビリビリと山塊の山びこと共鳴し、崖の表面に無数の亀裂が入り岩肌が崩れ落ちる。


魔王は『地獄への通り穴』に上半身を通し、今まさに、人間世界へと這い出ようとしていた。


王国軍を覆い隠すほどの巨大な影が地面に落ち、あたりが夜さながらに暗くなる。

その大きさはおそらく、這い出て来た上半身だけから推測しても、全長で40mはあった。

あの巨体がこの世界に全容を現したら、

人間の兵士たちなど、まさにアリのように踏み潰されて終わりに思えた。


腰まで地上に姿を現した魔王の姿は、人間と酷似していた。

しいていえばその巨大さと、頭にある角と蛇のような眼球が『人間』とは違うぐらいだった。


彼女はグラマーなその体に、タイトで体のラインが強調される豪華な真紅のドレスを身にまとっていた。

予言書にあった『一千年の魔王』が、今まさに人間界に這い出ようとしていた。



『フフフフフ………小娘め!!

 貴様など私のひと踏みでペッチャンコに……』



「「「うおおおおっっっっっ!!??」」」



王国軍からひときわ大きな声があがった。


穴から這い出た魔王のたわわな胸が重力に従い、ぶるんと彼らの頭上で大きく揺れたのだ。

エキゾチックな香水の香を纏ったその風圧が、兵士達の顔をそっと撫で過ぎてゆく。


「デ、デカイ!!なんてデカさだ!!」

「ちきしょう!!まるで隕石だ!!」


胸囲にして21.25m。

通常の人間サイズに換算して、90cm・Hカップクラスの豊満なおっぱいが、

まるで地球に急接近したお月様のように、魔王の胸からぶら下がっていた。


「くっ…… あの巨乳が落ちてきたら、我が軍などその乳圧で潰され全滅だ……

 やはり予言どおり、人類は滅ぶ運命なのか………」


苦渋の表情で王国の老将軍が、頼りなさげに小さな少女…『勇者』を見た。

魔王のそれに対し、勇者の少女のなんと小柄で貧乳なことか…。


「デ、デカけりゃいいってモンじゃないもん!!!」

少女の言葉に、一部の兵士達がなぜか必死に首を縦に振る。


(あんな小さな少女が、あんな大きな魔王に勝てるわけない……

 人間がウル○ラの母と、ブン殴り合うようなものだ……)


あんな巨乳おっぱいに、貧乳が勝てるわけがない……。

王国軍に、絶望感が広がっていた。






次回[ツルペタ勇者とデカパイ魔王]。

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