霧の中、山の上、次が来た

@hasegawatomo

霧の中、山の上、次が来た

霧深く舞う

生もなく

死もない

あるのは

ただ高い

その上に座る

神様の子

座ってただ眺める

どちらもこちらも

いつも変わらない

なにも思わない


ある日

霧覚める

目も覚める

脳が冴える

山の下には

神様の子

そうか

自分もそうだった

思い出して

山を下りる

もう一人は

山を登る

転げては

また登る


さてアレが来るまで

転げてはまた登る

神様の子を眺める

霧が少しずつ戻ってきた

アレは忘れているのか

転げてはまた登る

神様の子を眺める

まとう生地がボロボロになっている

自分の生地と比べる

自分の方がボロボロだった


神様の子は頂上に届く手前で

また転げた

頭を強く打ったのか

うーんと体を丸くする

ふと思う

次の神様の子が来て

頂上に誰もいなかったら

急に楽しくなった

そんな気分を察してか

翼をもつ神様以外のモノが現れる


神様の子は神様の子に話しかける

「おい、山に登る必要はない。これに乗るぞ」

「話は禁止されている」

「それを禁止してやる」

「山の頂上で世界を眺めろと言われている」

「それを禁止してやる」

「ダメだ。話は禁止されている」

「いいんだ。次は来る。その次も来る」

「だからまずいじゃないか」

「いいんだ。次のやつの為だ」

「どういうことだ?」

「さあな」


神様の子らは翼のモノに尋ねる

「これからどうなる」

「どうしたい?」

「さあな。お前が教えてくれるんじゃないのか?」

「はぁ。これだよ、いつも」

「どういうことだ?」

「お前らは何にもわかっちゃいないって事さ」

「そりゃそうさ、山の頂上にいただけだ」

「その傲慢さが俺は好きじゃないんだ」

「傲慢?」

「はぁ。全く。救いようがねえ」

「とにかくお前がこれからの事を教えてくれるんだろ?」

「そうだよ。乗れよ」

「それは得意だ」

そう言われて神様の子らは翼のモノによじ登った


翼のモノは内心心躍っていた

初めて神様の子ではなく子らを乗せた

森はすっかり霧深くなっていた

翼のモノは知っていた

大昔から伝わる話を

山の頂上から神の子が離れる時

翼のモノがこの世の支配を手に入れると

嘘か誠か知らないが

それを証明するチャンスが巡ってきた

こいつらにはとりあえず遠く

とびっきり遠くを案内してやる


「これからどうするんだ?」神の子らが言う

「そうだな、世界の端っこを見せてやるよ」

「端っこ?なんだそれ?」

「見りゃわかるさ」

「ふーん」

「静かに乗ってな」

「それは得意だ」


ダレモシラナイ

キリノモリガイロヲカエ

ヤマガクズレオチテイク

ユックリト

ユックリト

セカイノチュウシンガ

アナヲアケルマデ

カミノコラノタビハツヅク

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