第355話

「お嬢様は、普段、お付きのベンツで移動されているそうですが……」

「……」そう言う事か…… 


「バスに乗る事は滅多にない……

 何で、あの日に限ってバスに乗っていたのでしょうねぇ……」

 矢作は家政婦たちを見つめた。


「は、ハイ……」武藤サクラも返事を戸惑っていた。


「バスに乗って、いったい何処どこへ行くつもりだったンですか……」


「……」そうだ。あの日……、レイラと私は焼身自殺をした男に追われ、バスへ飛び乗ったんだ。

 その時、レイラが二人分の乗車券を買って乗り込んだ。


「本当に、一人でバスに乗り込んだのですか……」


 うゥ…… そうか、確かに不自然だ。

 お嬢様が一人でバスに乗るのは……


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