第352話 

「ま、お嬢様には到底及ばないと思いますが」

 また矢作やはぎは微笑んだ。

 いや、謙遜だ。スゴい腕前に鳥肌がたった。

 単にピアノを習っていたと言うレベルではない。


「当然でしょう…… お嬢様はプロ級ですから」

 代わりに桐山アキラが応えた。


「フフ…、ッで、お嬢様の怪我の具合は如何でしょうか……」

 矢作やはぎの問いかけに私は無言でうつ向いた。

 正直、今の演奏を聴いたら自信がなくなった。


「良いですか。お嬢様は両手両足、腰を強打し現在、リハビリ中です」


「なるほど…… 大変ですなァ~」

 矢作はソファに座り直し、またコーヒーをズズゥーと啜った。

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