第351話

「実はこれでも俺ァ~、小さい頃、ピアノを習ってましてねぇ~❗❗❗」


 フン……、まさか。

 『猫 んじゃった🎶🎵』でも弾くつもりか。


 矢作はピアノの前に座り、右手を握ったり開いたりして確かめた。


矢作ハギさん……」若い冨田が心配そうに声を掛けた。


「……」全員の注目の中、矢作は両腕をサッと上げ、ゆっくりと鍵盤に指を添えた。


 意外なことにショパンの『別れの曲』を弾き始めた。


「おォ~❗❗」

 一瞬、そこにいる全員がざわめいた。

 綺麗な旋律だ。


 見事にミスタッチもなく弾きこなしていた。

「……」ただ者ではない。


 途中まで弾いてこっちを振り返った。

「ふゥ~……、如何いかがです」

 矢作は不敵な笑みを浮かべた。

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