第2話 榊 ルナ❗❗❗

 ドアを開けると玄関には見慣れない革靴が置いてあった。



「ン……❓❓」

 どこのジジーの靴だ。

 ひと見ても解かるが、かなりの高級品だろう。


 少なくとも、オヤジの靴ではない。


 こんな高級な紳士靴は履いてないはずだ。




「おォ~~……!! ルナかァ~ーー!!

 遅ッせェ~ーーよ! バァ~ーカ!!

 いつまで待たせるんだよ!!

 今日は早く帰って来いって言っただろ」

 居間から顔を出し、アイツが怒鳴った。



「ふン…… 知るかよ」

 とっさに、私はそっぽを向いた。


 名ばかりのクソ親父だ。



「おい、何やってンだよ!!」

 また親父が私に向かって怒鳴っている。



 すでに酔っ払っているのだろうか。

 仄かに顔が紅く染まっていた。



 まったくいい気なモノだ。



「知るか! 親父ジジー!!

 テメーと約束した覚えはねぇ~よ!!」

 このジジーのために私の人生は散々だ。


 

 幼い頃、母親も逃げ出して、それからは食事さえロクに与えて貰ってなかった。

 

 完全な育児放棄、ネグレクトと言うヤツだ。


 稼いだ金は、そっくりギャンブルに消えていった。



 今まで生きて来れたのが奇跡だ。



「おいおい!! お客様が居ンだぞ!!

 そんなヤンキーみたいに汚ない言葉使いをすンな……!!」

 親父は無造作にバスタオルを投げて寄越した。




「はァ~ー、親父ジジーの客の機嫌なンか、関係ねぇ~だろ❗❗」

 マジ、うぜェ~~ーー!!



 受け取ったタオルで染めたばかりの金髪をぬぐった。





 私は、『ルナ』❗❗






 榊 ルナって、名前だ。




 







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