第肆話『新たな仲間』

晴彦とサヨの目の前では、頼光を名乗る少年が紙芝居劇場を開いていた。

「平安京で有名だった頼光くんは、死にました!そして気がついたら、よくわからない、文明が進化してるところに蘇ってました!鉄の猪!天にも届く建物!頼光くんはわくわくです。」

そう言って出した絵は、車やビルだった。微妙に上手いのがムカつく。

「とはいえ、ここがどこなのか。それが知りたい頼光くんは、道行く人に尋ねました。『ここどこ?』と。」

その場面の紙には、刀を一般人に向けている頼光の姿。

「いやおかしいだろ!」

なぜ道を聞くのに刀を向けたのか。そしてそれを悪いことと思っていないのがまた恐怖を煽る。十中八九、彼が昼間の刃物を持った人物だろう。

「そしたら何か、怖い人達に捕まっちゃいました。頼光くんはどうしてかわからなかったけど、遂に理由がわかりました。刀が駄目だったんだ。『どうしよう。今だけ隠れて欲しいな。』そう思ったら、刀が消えました〜!なのに彼らは頼光くんをつれて行こうとしました。酷いよね。そこで頼光くんは気づきました。晴明殿の妖力があることに!怖い人達に、ここに知り合いがいるって言って連れてきてもらいました。そこからは知ってるよね。終わり!」

晴彦の事務所兼自宅の描かれた紙を最後に、頼光劇場は終わった。話の流れはともかく、紙芝居としては上出来だったと思う。話もなんとかわかった。

「今思えば、貴方が晴明殿じゃなくて良かったかも。あの人助けてくれない気がするし。で、ここは僕の時代からどれぐらいあとなのかな?」

サラっと頼光が言った先祖の悪評に、晴彦は複雑な気持ちになった。お前さっきなんだかんだ優しいと言っただろう、と。まぁ、安倍晴明の悪評は沢山聞いてきたので今更気にすることは無いと思った。

「平安だから、千年ぐらいか?」

「ええ千年!人間続くもんだねぇ。道理で見たことないものが沢山あるわけだ。あ、そうだ。お願いがあるんだけど。」

「おう、なんだ?」

「僕もここに置いてくれない?ここで生きていける気しないし、仕事の役に立つよ。あとちょっと気になることあるし。」

頼光がそんな事を頼むとは思わなかったので驚いた。変なことされても嫌なので、晴彦自身も自分のところに置く気満々だった。そして同時に、彼の言葉に引っかかるものを感じた。

「気になること?」

「そこかしこからする鬼の臭い。」

頼光は口元を隠し言った。先程とは打って変わって声色や表情に嫌悪感が滲み出ている。

「生きてる頃はこんなにしなかったのに。きっと僕が黄泉還った事と関係があるはずだ。」

「……」

「ってなわけで!どうかな?」

コロコロ態度が変わる頼光に若干引きながら、晴彦はそれを許諾した。

「構わねえぜ。てかそのつもりだったし。その話は俺も気になるからな。なぁサヨ?」

「うん。僕も賛成。仮に貴方が源頼光じゃなくても、死んでる事と不思議な力がある事は間違えないし。」

「んもー、本物だよ〜!でもありがとう!」

そう言って、源頼光は改めて二人に向き合った。


「よろしくね!晴彦!サヨ!」

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