プロローグ 小学生in東京

その1

「お前はどっちがいい?」

 父の問いに螺鈿は若草と答えた。家が学区の狭間にあった螺鈿には選択肢が二つあった。


同じ幼稚園の大半が行く小学校、梓村(しむら)小とおそらくだれも行かない小学校、若草小。まだ幼稚園児であった螺鈿に父はそれぞれの長所、短所を丁寧に説明し選ばせた。最終的に若草をえらんだ訳は幼稚園のみんなと別れることよりもまだ知らない人たちに会えるという希望が勝ったからだ。

 結果、その日の螺鈿は独りぼっちだった。父の説明にあったように同じ幼稚園から若草小に進学した子供は居なかったからだ。入学式が終わり教室に入っても話す相手が居なかった。しかし、周りにも同じような境遇の子供がいた。螺鈿の前に座る少年で名をわたるといい、偶然にも螺鈿と同じ系列のマンションに住んでおりまたそれが話を弾ませた。

 しばらくして彼女と友達になった。休み時間は彼女と彼女の幼馴染みであるさとしと遊ぶのが当たり前になった。


放課後は二歳下の弟と遊んだり、同じマンションに住んでいたことが発覚したたけるや、かなと遊んだり、わたるの家におじゃましたりした。


小学二年生になってもそのサイクルは変わらなかった。ただ、友人が二人増えた。敏志と同じ鉄オタの通称もりけんと、転入してきたなな。また、螺鈿自身にも変化が起きた。親の事情でしばらく帰りに児童館に通っていたときに囲碁というものを覚えた。

家族ではまり、新宿の囲碁教室に通い順当に強くなっていった。それこそ他の人に自慢できるほどまでに

…しかしそれが原因で起こる事件を螺鈿はまだ知らない。

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