SNS?スマホ?なにそれ美味しいの?
馬瀬暗紅
プロローグの前に悪夢を一つ
第一話
「はあはあ」
ひたすらに走る。ここがどこかも分からない、けど走る。目的はただ一つ、彼女に会うためだ。約束の時間はもう過ぎている。最後に急な坂を駆ける。
そこに彼女はいた。
「**!」
駆け上った先で向こうを向いている女性に息も整わないままそう呼びかける。その声はかすれて自分でも情けなかったけど、確かに届いたらしく、彼女が振り向く。しかし、振り向いた彼女を見て絶句する。そこにいたのは自分の知る女性ではなかった。顔には濃く醜い化粧が施されているほか、服のセンス、体型、女のすべてが癇に障る。自分が少年だった頃密かに憧れていた少女の面影の欠片もない。そして、呆然とする自分を余所に女は薄く微笑むと、少女を含めた数人しか知らないはずの当時の呼び名で自分のことを呼んだ。
「久しぶり、++」
「ああああ!!!!」
自分の絶叫で男が目覚める。時計を見ればかなりの早朝だったのだが、あの夢の後にもう一度寝る気にもなれなかったらしく朝支度を始める。男の名前は宮田螺鈿(みやだらでん)といい、この春無事大学生となり、今日が初めての登校日である。だが、螺鈿にとって今日という日は他に大きな意味を持っている。それは夢にも出て来るほどに想い焦がれる彼女と約六年ぶりに会いそして、再び自分の思いを告げる日だ。しかし、実際、螺鈿も一昔前に一度告白し、見事に玉砕しているが、螺鈿にはある勝算があった。
その日の午後、螺鈿は大学近くの喫茶店で彼女を待っていた。朝、他の人よりも早く来ていたおかげで無事に彼女に会うことができた螺鈿は放課後に会う約束を取り付けた。そして今に至る。彼女が来るまでの時間、今朝の悪夢のせいで寝不足だった螺鈿は気づけば眠りへと落ちていった。
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