二極化した学園に未来はあるのか否かということ。

みつこ姐

第1極 水を得た魚

 こんな片田舎の山奥に、全寮制の進学校があるなんて誰が知っていただろう。駅まで車で40分、直近のコンビニまで歩いて30分もかかる。何が近くて便利だ。往復一時間のコンビニに便利さの片鱗は見えた試しがない。兎も角今は必死に歩かなければと、朦朧とする頭で山道を歩く。これが自分のためのスイーツならばまだしも、先輩のパシリなのだから、またタチが悪い。なんとかでかい校門が見えてきたところで、はぁ、と息を吐いた。

「遅いぞ! 少年!」

 建物2階から声が降ってくる。上を見ると憎らしいフルスギ先輩(女)の顔が窓からひょこっと覗いていた。

「フルスギ先輩..... まだ55分しか経ってないんですけど?」

「少年はなにもわかっていない 食べたいものを待つ時間というのは、いつもの数十倍長く感じるものだ」

「じゃぁフルスギ先輩が行けばよかったんじゃないですかー!?」

「ジャンケンに負けた少年が悪い ほら、早く上がっておいで」

 しぶしぶ2階に上がって、先輩の待つ美術室のドアノブに手をかけると、待ってましたとばかりにドアが勢いよく開いた。

「おかえりぃ! 少年ちゃん!」

「オネェ先輩 ただいまです オネェ先輩はプリンと紅茶でしたっけ?」

「そぉよォ ありがとねン ンーマッ♡」

 苦笑を返して部屋の中に入れてもらうと、待ちくたびれた様子のフルスギ先輩と、読書に夢中でこっちに気づいていないメガネっ娘先輩そして、外に漏れるぐらいの爆音でゲームし続けている、ゲームくんがいた。

「はい、フルスギ先輩がポテチとコーラ メガネっ娘先輩が新刊とモンブラン ゲームくんが肉まんとあんまんね」

「うむ。待ちくたびれたぞ 少年」

「え? .....あぁ!ありがとう。少年くん」

「さんきゅぅーう!! 少年!! そこ置いといて!!」


 労われず、忘れられ、二の次にされる。

 そんな日常。ここは"夜の美術部"通称裏生徒会。フルスギ先輩とメガネっ娘先輩とオネェ先輩 そしてゲームくんと僕(少年)の5人で活動していて、気づけば学園を裏で牛耳る権力を得ていた。

 というのも、本当に生徒会長を務める先輩と女子寮長メガネっ娘先輩、男子寮長ゲームくんと学園最大勢力のバレーボール部部長のオネェ先輩が集まってしまったからである。僕は、ペットみたいなものだ。

 このタイトルが水を得た魚である所以は、退屈していた権力者たちがおもちゃと遊び場(ついでにペット)を得て、学園で大暴れするまでの僕の日記であるからである。

 ペット少年書く

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