神様、仏様がお待ちです

定食亭定吉

1

 人里離れた山里に仏様は住んでいた。下山して街に外出も難しく、自給自足生活をしている。

 平穏で幸せな日々がそこにはあった。春風が時々、肌寒く吹いている。彼岸シーズン中、友人の神様が来訪した。

「久しぶりですね。神様!待ってました」

神様は小柄で色白な三十代前半男性。

「よー。仏様、久しぶり!」

仏様は南国風の浅黒いイケメン。いつもにこやかで善のオーラが出ている27才。

 ちょうど仏様は、雑草を処理していた。

「凄まじい生命力ですね!」

雑草に関心する仏様。

「どれだけ性欲強いのか?」

「いや、そういう事ですか?」

呆れる仏様。

「ヒトみたいに長生き出来ないだろう」

「ヒトは何ために生きているのでしょうね?」

「あの世にいるから、無関係だが、この世から、おさらばする時、精算してもバチの当たる事はなかったから、ここにいるのは確かだろう」

「僕ら、無事にあの世の人となれたものですね」

「うん」

「あっ、風呂に入りますね」

庭にドラム缶風呂がある。仏様は入浴の準備をする。

「だったら、一緒に入ろう。その方が節約になるし」

神様はスケベな表情。

「嫌ですが、お客さんですから特別ですよ!」

 誰も見ているはずはないので、堂々と着替える二人。日中とはいえ、やや寒さを感じる。気持ちよく入浴の二人。

「股間ばかり見ないで下さいよ❗」

神様の肩を叩く仏様。珍しく怒りを出す。 

「いやー、つい」

股間を反応させる神様。

 そんな中、二十四、五歳ぐらいの女性な見慣れない車でやって来た。

「あれ、あいつ、何でここに?」

神様と仏様が生前、知り合いの杏美だった。

「あの世までいって、この世であいつと再会するとは」

杏美の事が苦手だった神様。

「まあ、様子を見守りましょう!」

何やら、泣いている杏子。神様は察知した。

肌寒い風邪が余計に不穏な気持ちにさせる。

「死にたい❗死にたい❗」

誰もいないとわかり叫ぶ杏子。

「あいつ、リア充ぶっていたのか?」

「そうみたいですね」

いつも神様を見下していた杏子。確かに世間から見れば、まともな仕事につき、容姿もよく、友人も多かった。

「おい!どうした?」

苦手な相手であったが声をかける。

「あれ?」

杏子には見えたようだ。

「それより、どうした?話してごらん?」

「とにかく死にたい」

泣き付くような杏子。

「彼岸に成仏することはない。それと死んでもこの世とあの世は変化ないかも知れない」

「えっ?」

「まあ、生前の行動で精算されるかも知れないが、悪さもしなければ、案外、神や仏なんてなれるかもしれない」

「そんなものなの?」

「好きにしたらいい。でも辛いの?」

こんなに杏子と会話したのは初めての神様。

「うん」

今まで苦手だったが、何とか杏子を愛しく感じた神様。

 女を感じさせるボディー。しかし、それは虚像だったのかも知れない。

「ここで住んだらいい、俺らもいるから」

優しい神様。

「えっ?神様、ずっといるのですか?」

「生前、家を失ったからさ」

「あー」

笑顔で見つめ合う。神様、仏様、杏子。





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神様、仏様がお待ちです 定食亭定吉 @TeisyokuteiSadakichi

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