お昼休みの告白

 昼休み、凛子たちは特別に会議室でお弁当を食べた。

 久々に登校した萌花が、凛子たちとならお昼も食べるし、午後もいると言ったので、保険医が喜んで会議室の使用許可を取ってくれたのだ。

「あんまりトクベツ扱いしてると、返ってクラスに戻りづらくなりそうだから、今日だけだってよ」

 萌花は恥ずかしそうにそう言った。

 萌花と心菜はコンビニのお弁当だった。

 萌花は親に、学校に行くと言わなかったので、お弁当を作ってもらわなかったのだという。

 心菜の母は看護師で、夜勤明けの朝はお弁当がないのだ。

 広い会議室のテーブルに、四人横にならんでお弁当を食べる。

 凛子はとっても楽しかった。

 萌花がいる。心菜も志穂もいる。

 サナと連絡がつかないことは辛いけど、この四人が一緒に学校でお弁当を食べているということが、本当に嬉しかった。


「昨日ね、お姉ちゃんにサナってコ、知らないか聞いてみたの」

「おお! ねーちゃん!」

 凛子が昨日の話を始めると、萌花が名案を閃いたような、はしゃいだ声を上げた。

 萌花は一人っ子で、凛子の姉のことを「ねーちゃん」と読んでいる。

「サナさん、年上っつってたもんね。ねーちゃん知ってた?」

「うん。知ってたってほどじゃないんだけど、お姉ちゃんが小学校二年生のときに、一年生にサナって名前のコがいたって。けどすぐ転校しちゃったって。名前の漢字が、南って書いて『な』って読むのが珍しいと思ったから、覚えてたって」

「おおー! なんかすごい情報じゃない?」

 志穂が小さく拍手しながら言った。

「えー、でも、そしたら未来人じゃないじゃーん!」

 心菜が唇を尖らせて言った。

「まだわかんねーぞ。未来に小一で飛ばされて、最近帰って来たのかもしんねーじゃん」

 萌花がテキトーなことを言った。絶対に本心ではなさそうだった。

「それ、LIOに話した?」

 萌花に聞かれて、凛子が頷きながらスマホを見せようとした時、不意に会議室の引き戸が開いた。


 凛子はビックリして、スマホを落としそうになった。

 心菜も「ビックリした~」と声を上げた。

 目を見開いて四人が見つめる先に立っていたのは、星宮結人だった。


「え? 誰?」

 萌花が困惑した声で言うと、すかさず志穂が「転校生の星宮結人君だよ」と耳打ちした。声は全くひそめていなかったが。


「その、ちょっといいかな?」

 星宮結人は、室内に上半身だけを乗り出して、気まずそうに言った。

「えっダメ~」

「こら。ここちゃん。どうぞ。どうしたの?」

 心菜がいつもの口調であっさり拒否したので、驚きで固まる星宮結人を、志穂が立ち上がって招き入れた。

 星宮結人は入るなり、急いでドアを閉めて、一歩前に出て立ち、床を見つめたまま話し始めた。

「あのさ……先週俺に姉さんがいるかって聞いていたじゃん?」

「うん、聞いた」

 心菜がケロリと答える。

「俺、いないって言ったじゃん?」

「言ったねえ」

 今度はおっとりと志穂が答えた。


「あのさ……ほんとはいるんだ」


「あ?」

 苛立ったような萌花の声に、星宮結人はビクリと肩を震わせた。


「だからいるんだ、姉さん。ほんとは」

「どういうこと?!」

 凛子は思わず立ち上がって、少し大きな声を出した。

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