第28話 世界の真実
――2年前、パラレルワールドは存在していなかった。
宇宙創成時に分かれたマイナスの因子の7割。
ただ何も変化していない因子だけが存在している状態だった。
それまで誰も観測しなかったために、存在しなかった世界。
しかし、二杜氏豊が観測してしまったために、元の世界とそっくりのパラレルワールドが構築されてしまった。
観測者である二杜氏は、ただあるがままに観測すると元の世界のまま構築され、都合よく観測することで自分の意思をそこに反映させることができることを発見する。
パラレルワールドに住む人間は、元の世界の人間の存在をベースに反転させた人間であることすら気が付かずにそのままの生活を続けている。
全ては、二杜氏によって好きなように作り上げられた世界であった。
パラレルワールドでは、『人間の性別は反転する』と観測し、『二杜氏ゆたか』のペアは『永遠に10歳の幼女』であると観測し、そして、その幼女は『魔法少女』だと観測した。
ライバルとして、ゆたかと同等の強さを持つライバルであるイシュタール・ルミンを『天使』として観測した。
片や魔法少女として。
もう片方を天使として。
更には、魔法少女の敵となる『魔物』を観測した。
自身が自らの目的の為に悪魔を生み出したというジレンマから、二杜氏ゆたかは魔法少女でありながら、悪魔のようなデザインになっていった。
ルミンはその対であるということで、天使のようなデザインとして生み出された。
しかし、イシュタール・ルミンは強すぎた。
二杜氏ゆたかと同等の力があって、強敵として存在させようとしたからだ。
2年前、激戦の末になんとかルミンを退けることに成功した。
しかし、二杜氏は大きな過ちを犯した。
その強敵の姿を可愛らしい女の子として観測してしまったのだ。
そのため、二杜氏はそのルミンを消す事ができなかった。
女の子を葬ることに躊躇を覚えてしまったのだ。
「君を消すことはしない。その代わり、人間を襲わず静かにしていろ」
と約束した。
そして、ルミンは二杜氏ゆたかと同等の力を持ったまま世に放たれる。
しかし、ルミンにはこの世界に興味はなかった。
ルミンの願いはただ一つ。
ルミンは自分の創造主である二杜氏豊に愛されたかった。
共に豊によってつくられた存在であるゆたかだけが一心に愛を注がれていて、それに嫉妬していた。
しかし、自分はゆたかに倒されるべく作られた存在であり、二杜氏豊の愛情は全てゆたかに注がれていると思い込んでいた。
だから、自分は愛を注いでもらえない存在だと思い込んでいた。
その為、ルミンはずっと眠り続けていた。
『ゆたか』と交わした唯一の約束を胸に。
しかし、新たにパラレルワールドに来た歩の存在を知る。
自分以外の人間を、パラレルワールドに連れ込んだ。
たった一人の人間を。
二杜氏豊が選んだ歩がどんな人間なのか興味があった。
ゆたか以外にも愛情を注いでいる人間がいる、もしかしたら自分も愛情を注いでもらえるのではないかと思うようになる。
歩を知ることで、どうしたら愛情を注いでもらえるかがわかると思い、歩を観察しようと考えた。
こうして、二杜氏ゆたかが魔物を呼び寄せている気配を察知し、ルミンはゆたかに再び相まみえることとなったのだった。
「私は……知っている。たった一人だけ……特別に『ゆたか』が招いた人間がいることを。
特別……なんでしょ? 彼女……ううん、彼って。私……知りたいの。どうやったら……『ゆたか』の特別になれるか。『ゆたか』の『特別』は……もうあんただけのものじゃない。
わかる? 私にだって……『特別』になれる権利があっても……いいんじゃない?
私は……約束を守った。だから……私にもチャンスをちょうだい。私にも……彼を見せて。否定は……させないわよ」
「断ったら……?」
「『ゆたか』が作ったこの世界を……壊したいの?」
「くっ……わかった。明日、学校にこい。生徒として受け入れてやる。おとなしく生徒を演じろ。その代わり、わたしの魔法少女にしてやる。歩もわたしの魔法少女だ」
こうしてルミンは4人目の魔法少女となった。
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