第25話 プールで特訓! (後)
ゆきちゃんとの楽しい時間を引き裂かれ、強引にボクは先生に引っ張られていった。
「ゆたか先生、ひどいよぅ」
連れられてきたのは底の浅いプール。
「あのな……あゆみ」
先生は頬を赤らめ、もじもじしながらボクを見上げている。
ほんとうに可愛らしいですね、先生。
「なんですか?」
つい頭をなでなでしそうになる衝動を抑えながら笑顔でボクは答える。
「わたしに……泳ぎを教えて欲しいんだ」
先生は手で持った浮き輪で口元だけ隠し、ボクをじっと見つめている。
初めて見る先生のお願いポーズにボクは思わず心臓が高鳴ってしまう。
可愛い……可愛すぎます先生……!
思わずぎゅって抱きしめたくなっちゃうじゃないですか!!
あの先生が……! ボクにお願い事をするなんて!
「もちろんいいですよ……と言いたいところですけど、実はボクもそんなに泳ぎは得意じゃないんです」
えへへとはにかんでみる。
「それでもいいんだ……やるべきことは知ってる。だから、わたしが溺れないように手を握ってて欲しいんだ」
「それくらいなら大丈夫ですけど、ボクよりルミンさんやゆきちゃんの方が上手に教えられるんじゃないですか?」
「悪いな……あゆみ……他の奴には頼みたくないんだ。特にルミンに教わるなんて死んでもやだし。ゆきには出来る先生だと思ったままでいて欲しいんだ」
「ボクなら……いいんですか?」
「あゆみは……ほら、何て言うか何でも下手だろ? だから安心するんだ」
「それボク褒められてないですよね?」
「だからあゆみがいい! あゆみじゃないと嫌なの!」
あの先生にそこまで言ってもらえたならボクは断るわけにはいかない。
でもね先生、ボクの傷ついた心は癒してもらいますからね。それに、ゆきちゃんとのらぶらぶな時間を引き裂いた恨みはたーっぷりと晴らさせてもらいますからね!
うふふ……覚悟してくださいよ!
「わかりました。ボクでいいならお手伝いしますね」
「……ありがと」
ボクは先にプールへと入って先生を待つ。
先生はつまさきをちょこんと水に入れるが、すぐ足を引っ込めてしまった。先生は水が怖いのだろうか。
それならと、ボクは先生が安心できるように両手を広げて水の中で先生を待ち受ける。
それを見た先生は覚悟を決め、ドボンと水の中に飛び込んだ。
水中で両手をばたつかせるも水中へと沈んでいく先生。
「あうっ……あぅっ!」
完全に溺れている先生へと近寄り、抱き抱えてあげた。
「はぁ……はぁ……」
息を荒げながら両手両足でボクに抱きつく先生。
うはぁ! これは……いわゆる『だいちゅきほーるど』の形だ!
柔らかい先生の体の感触がボクの体に密着している。
怖がる先生をボクも抱きしめ、二度と味わえないかもしれない状況を堪能する。
とても大人にはみえないこの細い身体。
とても大人にはみえないこの細い腕。
とても大人にはみえないこの胸……
膨らみかけの……いや、膨らむ前? いや……永久に膨らまない小さな胸。
一般男性は決して手を出してはいけない聖域。
でも、ボクは女の子だから! 全然問題ないのです!
だから、決してこれはイケナイことじゃないのです!!
だから、決してこれはイケナイことじゃないのです!!
大事なことだから、ボクは2回同じことを心の中で繰り返す。
先生は30歳だからね!! 大人だから! 合法だから! 合法ロリだから!!
ボクは誰に言ってるのかわからないセリフを心の中で呟いた。
「最初は、水中で目を開けるのからやるから!」
だいちゅきほーるどのままボクを見上げる幼女、もとい『大人』の先生。
ボクが手を緩めて先生をそのまま水中へと降ろしてゆく。
すると、先生は慌ててボクの首にしがみついてきた。
「あゆみ!! 手!! 手繋いで!!」
可愛いなぁもう。
ボクは先生と向かい合って手を繋いであげた。
そしてゆっくりと向かい合ったまま水の中に入っていく。お互いの目を見詰め合いながら。
ぶくぶくぶく……
先生のぷくーとふくらんだ口から空気が漏れ、水泡が二人の顔の間を通り過ぎる。
先生の前髪が水で揺られ、時折あらわになったおでこが見え隠れする。
「んぐぐっ」と先生から漏れた声が水中で響く。
しばらくすると、先生は顔を左右に振ってボクの目に何かを訴えてきた。
まだ頑張るからって合図だね、先生。わかったよ!
ボクは先生の手を下にひっぱりこむ。
「んぐーっっ!!」
ごぼごぼっと先生の口から空気が大量に漏れ、体をくねらせた。
泳ぐ練習だね。頑張れ頑張れ。
ボクは笑顔を先生に送る。
「んーーっ! んーーっ!」
先生が少しづつ前進して、ボクに抱きつこうとしている。
これってあれだよね。少しづつゴールを遠くにしてだんだん泳げるようになるってやつだよね。わかってるよ先生。
先生があと少しでボクの元へと辿り着くかというその直前に後ろに下がってあげた。
先生は目を大きく見開き、ボクの顔を見て口をぱくぱくさせている。
先生の体の動きが鈍くなってきた。
わかってるよ先生。限界を超えたいんでしょ。その先に勝利があるんだよね。
掴み取ろう! 一緒に!
先生はそのまま動かなくなってしまった。
あ……やりすぎちゃったかな。
ボクはそのまま先生を抱き抱え、プールサイドまで運んだ。
先生を見ると、ぴくぴくしている。
先生は虚ろな目でボクを見ながら口を開けて何かを言っているようだ。
「いじわる……ばか……」
「何か言いましたか先生? あ、人工呼吸の練習ですね! わかりました!」
ボクは先生の鼻を摘まんでその小さな口に空気を送り込む。
ふー、ふー。ふーふー。
もみもみ。心臓マッサージも忘れない。
「んーっんーっ!」
もがく先生の両腕をしっかり押さえて、ボクは必死の救命活動を行う。
「先生! ボクが先生を守ります!」
ふー、ふー。もみもみ。
「いいかげんに……しろぉーーっ!!」
先生がボクを突き飛ばした。
突き飛ばされた先は流れるプール。
ボクはプールから這い出ようとしたとき、右手で何かを掴んでいることに気が付いた。
赤い……水着?
もしかして……これって!?
プールサイドを見上げると、胸元を隠した先生がぷるぷる震えていた。
「あーゆーみー!!」
先生がボク目がけて飛び込んできた。
「わっ!!」
驚異のジャンプ力でボクに掴みかかる先生。
そして、そのままボクの水着に指をかけ……
ブチン!
ボクの水着の肩紐が切れた。
「ひゃあ!?」
先生は空中で回転して、ボクの頭を両足で挟み込み、そのまま水中へと落ちていった。
当然ボクも水中へと引きずり込まれてしまう。
必死に離れまいとボクを抱き抱える先生。
水上に顔をあげようともがくボク。
ボクと先生の向きは正反対。
ボクの頭が上を向けば先生の頭は下に向く。
お互いに上ポジションを取ろうと激しい攻防が始まった。
水中で抱き合い絡み合うボク達は、そのままプールに流される。
流されること2周半。やっとのことで二人とも同じ向きになった。
「ぷはーっ! 先生! ひどいですよー!」
「ばか! お前のせいだー!」
ふとそこで二人は同時に気が付いた。
お互い密着する体に異変が起きていることを。
「あれ、先生……下の水着履いてます?」
「あゆみこそ……なんで素っ裸なんだ?」
あたりを見渡しても水着は見つからない。
見詰め合う二人はゆっくりと流されてゆく。
裸と裸で抱き合いながら。
「どうして……お前は毎回わたしにセクハラするんだぁぁぁ!!!」
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