第37話決闘は1ターン目に決まるんだよ?~ラウンド1~
コンテスト参加者が会議室に揃うと、司会が立ち上がり声を上げた。
「まずは皆さんご存知かと思いますが、コンテストの概要が一部正式に決定いたしました。お手元の資料をご覧ください」
いつの間にやら資料が手元に置いてあった。それに記載されている内容は概ねこんな内容だった。
1、コンテストは予選と本選の2段階構成で執り行われる
2、予選では、数チームに分かれたコンテスト参加者が『喫茶店』のスタッフとして、抽選に当たった一般生徒をもてなす。一般生徒は1人1票を持ち、会計時にスタッフの一人に投票する。
3、本選では、予選にて一般生徒からもらった票数に準じて自分の所持する票が決められ、今度は任意の参加者(自分でもオッケー)に投票する。得票数が一番多い者が優勝である。
ざっとこんな感じ。ということはだ…。小鳥遊との争点となっていた喫茶店のコンセプトをどうするのか?というのは、予選の出し物のことを指しているらしい。
「資料を確認して頂けましたか?それでは本日の本題ですね。皆様のHRの時間を頂戴して、予選の『喫茶店』のコンセプト案を考えて頂いたと思うのですが、順に教えて頂きたいです。各クラス2つまで出してもらって構わないですよ。まずは、Eクラスから宜しくお願いします」
「メイド喫茶です」
小鳥遊が弾んだ声で一つの案を出すと、
「きゃー、小鳥遊君メイドさん好きなの?!ギャップあっていい~メイドさんでおもてなししたい~」
黄色い声が女子を中心として上がる。流石は俺の好敵手ライバルと言ったところ…か。
次に、司会の指は俺を指す。弾んだ声にて、制服エプロン喫茶を提示する。
すると、ああ何ということでしょう。先ほどまでは色めき立っていた女子の声が瞬く間に聞こえなくなり、会議室には不自然な沈黙が訪れるじゃありませんか!
これ俺が命名したわけじゃないのに…。グスッ…。そもそも、コンセプト考えている時に俺はその場にいなかったのに…。ってか、気持ち悪いですわ♪とか言うなっ!イケナイこと言っちゃったみたいな感じて、手を覆ってもばっちし聞こえてんだよっ!
だがここでへこたれていてもしかたねぇ。俺は小鳥遊との闘いに勝つんだ。そうだ。俺にはここで戦うべき理由があるんだ。愛するべきもののために逆境に立ち向かう俺ってかっこいいな。うん。ポジティブシンキング大事。
そんなこんなで、順に副会長が各クラスの案を尋ねていく。一通りコンセプト案が出尽くすと、試行錯誤の上残った案は二つ。一つは『メイド喫茶』…。もう一つは『制服エプロン喫茶』…。
まさに俺達のために用意された戦場じゃねぇか?そう思うだろ?小鳥遊。
「それでは、この二つの案のどちらかに決めたいと思いますので、意見がある方はどうぞ」
今ここに男たちの熱き闘いがはじまった!
小鳥遊(メイド喫茶推奨):HP8000
VS
ピリオド(制服エプロン推奨):HP8000
決闘開始デュエルスタンバイ!
◯ピリオド(山田)のターン(1ターン目)
「俺のターンドロー!」
初手は様子見と行こうか。
「『魔法カード 通学路での出会い』発動!これにより、『黒の女王様五木(女)』をデッキから手札に加える。はい!そこ、嫌そう顔しないでこっちくる!こほん。更に、『制服野郎磯部(男)』を召喚!」
磯部はノリノリになって俺の前に立つ。
「学校は、俺のオアシス!女子の夏服からちらりと見える腋に敵うものなどなし!」
ピヨーン。
『制服野郎磯部(男)』☆☆
攻撃力:1000/守備力:1000
→夏服を来た女子が場に居れば攻撃力3000アップ
ここぞとばかりに、磯部が五木の所に駆け寄っていき声をかける。
「ああ、なんて美しいんだ!あなたの制服姿を至近距離で拝むことができる機会がこんなに早く来るなんて。はぁはぁ。写真とっていいですか?!」
熱のこもった制服野郎の言葉に対し、首を傾げながら人指し指を顎につけ腕を組む五木。検討する余地あるんだ?!まぁ、五木ぐらい美少女にもなると写真とか撮られ慣れてるのかもしんないしな。
それにしても、女の子が腕を組むポーズ、それは膨らみが強調されてしまうので止めて頂きたい。
期待に目を輝かせる磯部に対し、俺のすぐそばにいる凛とした声で少女が返答する。
「どちらさまですか?」
グサリという言の葉が彼を突き刺す音が聞こえる。それはもうはっきりと…。さっき悩んでいるように見えたのって、写真の良し悪しじゃなくて、こいつの正体が分からなかっただけかよっ?!いや俺も今日初めて会ったんだけどさ…。
それにしても、異性からの『誰?』発言、それすなわち存在が認識されていなかったってことになる。女子から言われたくない言葉トップクラスだぜ。
五木は組んでいた腕をほどくと満面の笑顔で磯部に向き直る。
「それに女性の腋を見て発情するなんて、なんて気持ち悪い雄なのでしょう。近寄らないで下さいな♪」
毒気を持った口撃は、いとも簡単に磯部のメンタルを削る。えげつないわ五木…。俺もぶっちゃけドン引きだったけどさ。女子に、特にお前みたいな容姿だけは超いいやつに言われると、大抵の男はだな…。
『磯部は墓地に行った』
「いそべぇぇぇぇぇッッッッ!」
ショックの声を上げる俺。それを満足そうに眺める五木。
この性悪女あくまでも俺の妨害に回るか…。
だがな、五木お前はまだ知らないんだよ。責められれば責められるほどパワーアップする男クリーチャーもいるってことをな!
ぷくくと笑っていられるのも今のうちだ…。アハッハッハッ。
ほくそ笑む俺に対して、正面に位置する小鳥遊は爽やかな笑顔で俺達の連携をいじってくる。
「どうしたんだい?山田君?初手から仲間割れかい?これは勝敗を決するのも時間はかからなさそうだね」
「フン。まだ始まったばかりだ。場にカードを一枚伏せてターンエンドだ」
◯小鳥遊のターン(1ターン目)
「ドロー!ふむ。最初はこれかな?『魔法カード 入国のおまじない』発動。自分のHPを1000削ることで、デッキの中からランダムにレディを取り出し特殊召喚する!…うん。頼むよ『文学少女本田柚希』」
ピヨーン。
『文学少女本田柚希』☆☆
攻撃力500/守備力500
→特に備考なし
出てきたのは、牛乳瓶の底みたいなグルグル眼鏡に、おさげの髪型。THE文学少女みたいなやつだ。図書館の受付とかにいそう。俺の美少女鑑定準1級の鑑定によると、5段階中Cマイナスってところだな。
俺が内心で辛口の評価を彼女に下しているとはつゆ知らず、本田柚木はたどたどしく自己紹介を始める。
「よ、宜しく、お願いします」
…。普通すぎる…。一周回って没個性が個性なの?なんて、考えてしまうほど普通…。こんがらがってきたから、美少女を見て心を落ち着けよう。
俺のねっとり舐めまわすような目が、学園のマドンナ神崎藍に注がれる。まさにここにあるべきという黄金比率で構成された顔は、白百合の花のように美しい。やっぱり…好きだわ…。
胸囲に可変パーツを常備していることが判明したとはいえ、ないわけではない膨らみは俺の妄想等を膨らませるのに十分だし。スカートとニーソックスの間から除く、テニスで鍛えられた健康的な太ももには挟まれたくなる。
ふぅ。
俺が一息つくと、神崎の様子がおかしいことに気付く。エロい目に耐性が高くないはずの彼女なのに、俺の熱烈な視線に反応することもなく、神崎は本田柚希を凝視していた。
ん?まぁいいか。
本田柚希の自己紹介が終わると、小鳥遊は自分のターンの終了を宣言する。
〇1ターン目の総計
小鳥遊(メイド喫茶推奨):HP7000
『文学少女本田柚希』☆☆
攻撃力500/守備力500
→特に備考なし
VS
ピリオド(制服エプロン推奨):HP8000
伏せカード×1
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