第36話次回予告って、作るときもワクワクするんだなあ

戦の狼煙が上がり、小鳥遊と俺は少し離れた席に腰をかける。すると、通知を知らせる音がスマホから鳴る。


 宛名は神崎からだった。ああそういや、『制服でできるやつを絶対選びなさいよっ!』っていう神崎からのお達しが来ていたわ。その意を尋ねたところの返信ってことだろう。なになに…。



神崎:だから喫茶店のコンセプトの話よ!制服にしないとまずいのよ。分かるでしょ?!



 ふむ。小鳥遊の提案するメイド喫茶を打ち破るのは確定的に明らかだから、喫茶店のコンセプトは制服エプロンで決定だ。そうなれば、神崎のお望みの結果になるわけだからまあ問題ないだろう。が、如何せん内容が抽象的過ぎてよく分からない。まずいって何が?最近の若者は具体性がなくて困る。



俺 :いやわかんないんだけど…。もしかして神崎って制服フェチだったりするの?



 ちなみに、俺は制服フェチの中でも、普段は着崩したりせず、清楚系な着方が好きだ。いや愛しているといってもいいね!


 ん?何でかって?そりゃ、日常はちゃんと制服を着こなしている女の子の制服を一枚一枚、脱がせていく方が背徳的なエロスを感じるじゃん。ぐふふ。


 神崎も制服フェチだったら、カップル成立した暁には制服でイチャイチャできるじゃないか!


 ってか今気づいたけど、学生ってヤバいな。エロコスチューム身に付けながら、日中過ごしてるんだぜ?!


 そんな妄想をしていると、神崎からのお知らせである。



神崎:そんなわけあるかっ!そうじゃなくて、私の状況を知ってるあんたなら気付くでしょ。普通。



 なーんだ。制服フェチじゃないのか…。残念…。


 さ、冗談はこれくらいにしてと。神崎の胸と掛けまして、制服と解く、その心は『どちらも希望を秘めている』でしょう。


 貧乳を隠すためのパッドが落ちたりしないようにするためにも、普段から着慣れている制服をご希望ってわけだ。


 なるほどね。でも、『そのまま貧乳だからだよね?』って尋ねるのは、レディに対して失礼だ。だから、俺の返信は…



俺 :分からないな。神崎降参だ。教えてくれよ。



 鬼畜主人公みたくなってみることにしたよ♪分からないふりをして、神崎で遊ぼう。



神崎:う、だから、私の家に来た時色々あったじゃない…



俺 :色々って?



神崎:その…膝枕してあげたりとか…



俺 :あの時はありがとう!でも何で倒れてたんだっけ?うーん思い出せないなぁ



神崎:あんた絶対覚えているでしょ?!ばかっ!後で覚えてなさいよっ



 顔を赤らめて俺をキッと睨み付ける神崎の姿が頭を過る。どんなごほうびが貰えるか楽しみだなぁ。



俺 :悪かったよ。話戻すと、俺たちのクラスでは、制服でやるの以外にもメイド喫茶とか出てるみたいなんだけど。神崎的にはメイド喫茶とかはありなの?



神崎:メイド喫茶をやるのはちょっと…



俺 :制服よりもガード高めな感じするぞ



 メイド服はフリルなどがついて華やかなイメージはあるけど、普通のメイド喫茶のコスチュームなら布面積も多めだし、神崎が心配するようなことは起きないと思うんだよね。あの時みたいにパッドがおちたりはね。



神崎:確かにその点に関しては、ピリオドの言う通りよ。ただ、メイド喫茶のパフォーマンスタイムを考えると、事情が変わってくるの!


すごく動くし



 え?!それって、メイドさんが手取り足取り御奉仕してくれる的やつですか?!ご、ごくり。



神崎:誤解のないように言っておくけど…


メイド喫茶ではね、メイドさんにおねだりするとステージで踊ってくれるのよ!自分の好きな曲を振り付けつきでね



 なーんだ。普通の御奉仕の方ですか。


 それにしても、メイド喫茶やるのを渋るわりに、やけに詳しくね?もしかして…



俺 :そうだったんだ。神崎は物知りだなぁ。そういえばさ、駅前にメイド喫茶新しくできたよな?



神崎:『メイド喫茶グレシャス』のことかしら?よく知ってるわねっ。ピリオドは行ったことあるの?



俺 :まだ行ったことないわ。神崎は行ったことあるの?



神崎:当たり前じゃないっ。あそこのメイド喫茶はすごくオススメよ!オーソドックスなメイド喫茶と少し違って、お客もスタッフさんと同じ立場が最初に与えられるの。それから通えば通うほど、見習い→新人→一般メイド→サブリーダー→リーダーにランクアップしていくから、自身の成長も感じられるわよ!



 かつてないほどの熱さを文面から感じる。できればこのやる気を普通のメールの時に出して欲しいものだ。



俺 :そんで神崎のステータスは?



神崎:フフフン♪聞いて驚きなさいっ!私は、『サブリーダー』よ!



 最近できたのに、そんなにステータスが上ときた。そこから導き出される結論は…



俺 :神崎、実はメイド喫茶大好きだろ?!



神崎:勿論よ!



 即答である。それから連続で通知音がなる。



神崎:でも女子でメイド喫茶通うのってやっぱり変かな?



俺 :別にそんなことないと思うぞ。可愛いものを愛でるのは、真理だからな。



神崎:それってフォローしてるつもり?(((^_^;)センスないね



 折角元気づけてあげようとしたのにこの仕打ちどゆこと?!



俺 :ほっとけ



神崎:あはは(*^^*)ありがと



俺 :へいへい



 なんか神崎と俺との関係性が段々分からなくなってきている今日この頃だが、近付いているんだよな?!多分…。


 そんな胸中でいると、神崎が会議室に入ってきた。軽く挨拶を交わして、俺から少し離れた席に腰かける。


 神崎とのやり取りで気付かなかったが、会議室にはコンテスト参加者が集まっていた様子。


 その様子を感じ取った司会と思しき人が教壇に立ち、ミーティングの開始を宣言する。



「これよりミーティングをはじめます!」







次回予告



ついに始まった、アテネ祭の喫茶店コンセプト会議。


小鳥遊君率いる最大派閥「メイド喫茶」案に、防戦一方のピリオド。



メイド喫茶…じゅるり…。いい響きだわっ。


早く私もメイドリーダーに就任したい…。あ、メイドリーダーってのは、さっき紹介した新しくできたメイド喫茶『グレシャス』のことでね。メイドリーダーになると、お気に入りのメイドさんと記念撮影が…



(中略)



…い、いけないっ。「メイド喫茶」案に投票するところだった。


恐るべしメイド喫茶っ!


こほん。



お願いピリオド!私のために彼に打ち勝って!


そして、「制服エプロン喫茶」案を通してっ!



次回、ピリオドの敗北



デュエルスタンバイ!


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