第31話ヤンデレ少女は熱々アプローチ?
はっとなって意識を取り戻す俺。何で意識を失っていたんだっけ?あぁ、五木のせいか。次会った時は、他の生徒の前で呼び捨てで呼んでやるから覚悟しろよ!五木が羞恥で顔を赤らめる姿が目に浮かぶぜ。フハハハハハ。自爆していたときの五木可愛かったなぁ。ふぅ…。
さて、状況整理といこうか。どうやら俺は仰向けに横たわっているらしい。瞼が重く、身体は動かないみたい。もう少し覚醒までに時間がかかるようだ。
残念ながら、今回の俺の頭の下には柔らかい感覚がない。固いので、どうやら椅子とか地面とかに寝そべっているのだろう。
ううむ。神崎の太ももの感触が恋しい…。あの弾力、すべすべした触り心地…。頭を太ももではさんでほしい。
そういえば、太ももと乳で頭を挟まれたことはあったんだっけか?まあ結局、神崎の乳は偽物だったわけだが、秘密を知れたから余は満足じゃ。かの偉人も『貧乳はステータス』って言ってたしな。
ここで一句。
神崎の かなしからずや 双丘よ
神崎の乳は『不憫である』が、同時に『愛しい』という俺の気持ちがつまった俳句だ。本人に言ったら大変なことになりそうなので、俺の胸の中にしまっておこう。
一つ決心がついたところで、気づく誰かの存在。俺の至近距離に誰かがいるようだ。
ま、まさかの事後的な展開だろうか。ゴ、ゴクリ。野外(?)という状況を考えるならかなりハードな展開だが、ラッキースケベまでクリアした俺にはそんなチャンスが到来してもおかしくはない。
そこで、俺の伴侶となっていそうなのは誰か?!
1神崎
確かに、神崎イベントはここ数日でかなりクリアしたと言っていいだろう。神崎の下着に加え、神崎の全裸もばっちし記憶の大切なフォルダに保存させてもらった。更には、膝枕までしてもらったし。
だが、いきなり『事後』だと飛躍しすぎだ。いくら高校男子が好きな女子でエロい妄想しているからと言って、中身すっ飛ばして結末だけというのは虚しすぎる。どれくらい虚しいかっていうと、ギャルゲの『ベッドで熱いキス』⇒『朝チュン』である。俺が見たいのは、その間なんだよっ!青少年に関する法律とかなんとかで、面倒くさいことは分かるんだ。でもな、禁止されたから何だ?!恋とエロは禁止されれば、より一層燃え上がるもんなんだよっ!
きっちり過程も楽しみたいので却下。
2五木
どんだけ属性持てば気が済むんですか。このお嬢様は。ただでさえ、『毒舌』、『お姉様』、『あらあら系』、『超人』、『ドS』を持っているのに、『エロ』まで持ったら無敵じゃないか。
(お呼びでしょうか?)
呼んでません!期待はしているけど。ここ俺の頭の中ですから、五木は外で待っていてください。
(あらあら、残念ですわ。それではご機嫌よう)
本人もいなくなっちゃったので却下。
3新キャラ登場
まだ登場していないヒロインっていう可能性もあるな。まだ出ていないのは、デレデレ、金髪外人、後輩、ヤンデレ、ツインテールってところかな?
まぁ、このあたりが妥当か?
そろそろ、瞼が開きそうだ。
さてさて誰が来るか…。
俺はゆっくりと瞼を開ける。どこかの天井が見える。次に、横に目を向けると、…
「お前かよっ!」
俺の横にいたのは、魔法使い(男)だった。ヒロインですらねぇ。目が半開きになりながら幸せそうに眠っている。はらたつわ~。
お、おう、何か殺意の視線がビシバシ感じるぜ。まあ、それは置いておこう。
俺が魔法使いに恨みがましい視線を送っていると、魔法使いがいる所とは逆から少女と思わしき声がかかる。お?
「あ、せんぱい、起きちゃったんですか?」
せんぱい…いい響きだ。やはりラブコメに後輩キャラは必要だよな。そうだよ。この物語には、後輩キャラっていなかったじゃん。満を持しての登場というとことだね。ってことは、3新キャラ登場が正解か?
高鳴る胸の鼓動を感じながら、彼女の方向を向く。そこには、髪で二つのお団子を作った美少女がいた。
「ミーティングの時に五木と一緒にいた子…」
どうやらお団子少女たる美々は後輩だったらしい。
「その節はきっちりご挨拶できなくてごめんなさい」
そう言って律儀に頭を下げるお団子少女。彼女には初対面でいきなりケダモノ呼ばわりされて以来、苦手意識を持っていた俺。でも、どうやらあの時は大好きな五木のことで混乱していたらしい。今はこんなに礼儀正しいし、過去のことは不問してやろう。
「気にしなくていいよ」
できる男は細かい過去に囚われないのだ。キリッ。
「ありがとうございます。それでは、これからご挨拶させて頂きますね」
少女はにこやかに微笑むと、懐からクナイを取り出して、俺の方向に近寄ってくる。あれ?
「あの…美々さん…?」
「はい、何でしょうか?」
いい笑顔だ。この状況じゃなければ、見とれていたかもしれない。この状況じゃなければ…。
「挨拶してくれるんだよね?」
「はい!心を込めたご挨拶を美々はせんぱいにしようかと思ってます♪」
更に距離を縮めてくる美々。一筋の汗がぽとりと額から落ちる。
「何でクナイ持ってるの?」
「美々の家は代々忍の家系なので」
「いやそういう経緯じゃなくてね。確かに忍の家系っていうのは驚きだけど」
額からダラダラと汗が流れる。
「何で挨拶のためにクナイ持ってるかってことだよ?」
「不埒者に身の程を知らしめようと思いまして」
「そっちの挨拶?!」
最近、ヤンデレというのがラノベやアニメで流行っているのは知っている。俺もそういうの読んでいる時はこんなに自分のことを思ってくれる美少女あり!って思っていたんだけど。現実で見るとアウトですわ。
急いで立ち上がろうとするも、どうやら手と足が動かない。自分の四肢に目をやると、頑丈にロープで拘束されている。ヤバい。ヤバい。
「一瞬で終わりますのでご安心を」
「安心できる要素何一つないんですけど?!」
目の前に立った美々が、クナイを俺の喉元めがけて振り下ろしてくる。
「お助けを~!」
「問答む…」
「いつも真剣な所が美々の長所ですもの♪いつも真剣な所が美々の長所ですもの♪」
美々のスマホが喋りだす。俺の喉元から数センチ先のところでクナイの刃先が停止する。この少女、録音した五木のボイスを着信音にしているらしい。こわっ。軽くホラーじゃん。
お団子少女は、ポイっとクナイを手放すと即座にスマホに出る。
「おはようございます!お姉さま、じゅるり。……。今ですか?…お姉さまを毒牙にかけようとしていた不届き者1名とその共犯者と思わしき1名を始末しようとしていました」
楽し気な声で恐ろしいことを呟く美少女。戦々恐々としながらも、近くに転がっていたクナイをどうにか使って拘束から自身の身体を解く。こんな日のために、クナイの使い方の修行しておいて良かったわ。
「はい、…ですが…。いえ、お姉さまがそうおっしゃるのであれば。…」
美々は俺が縄を解いたのにも気づかないほど、電話に夢中になっている。どんだけ五木のこと好きなんだよ?まあいいや。この間に、魔法使いの縄も解いてやろう。せっせと行動に移す。
「いえ、お姉さまがルールですから。…えへへ。美々は幸せです。…」
魔法使いの縄を解き終わると、手持ち無沙汰になる俺。とりあえず、地面に○×ゲームでも書いてみる。
「そういえば聞いてください。お姉さま!…。最近、ティータイムにもってこいのお店を見つけたんです!…そのよろしければご一緒したいななんて…」
やったぁ。〇が勝ったよ。まあ、×も俺が書いてるんだけどね?流石に10回ぐらいやってると飽きてくるな。
「え、いいんですか?!…いつ頃ご都合よろしいですか?…美々はお姉さまのご都合の良い時間に馳せ参じます!」
魔法使いが目を覚ます。適当に挨拶を済ませた後に、二人して体育座りになる。魔法使いはなかなか見る機会がないであろう美少女をガン見している。実に幸せそうだ。片や俺は…。
「はい。…それでは、今日の放課後ミーティングが終わったら行くということで…。」
ふー。よっこらせと。俺は両ひざに両手を当ててゆっくり立ち上がる。このヤンヤン美少女にガツンと言ってやろう。
「それでですね、お姉さま。もう一つお話しがありまして…」
「なげぇぇぇぇぇぇよ!ってか、ヤンデレの相手間違ってるよ!」
俺は美々に全力でツッコんでいた。まさかこのツッコミが俺の人生の分岐点だったなんて…。当時の俺は知らなかった…。
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