第7話幼馴染みって最高だよね?

 弥生の一言に対して俺は数秒思考が停止してしまった。『ピーちゃんの好きな人って私だったり?』という意味深な発言が頭の中をリフレインする。


だが、一たび内容を理解すると、即座に頭をフル回転させて、状況を整理しだす。どうにか情報を得ることが先決だと判断した俺は彼女に問う。


「そ、それってどういう意味だ?」


「そのまんまの意味だよぉ」


さっきの表情とは打って変わって小悪魔的な笑みを浮かべる。くぅ、かわいいじゃないか。いやいや、幼馴染のいつもと違う一面に見とれている場面ではない。情報が何も手に入らかった。これは、ノーヒントで答えを導くしかない。そして、俺は弥生の言葉の真意に対する三つの仮説を導きだした。



選択肢1、『実は昔からピーちゃんのことが好きで、ピーちゃんの好きな人が私だったらいいな』的な展開。


この展開は、告白されたことのない俺にとって一番胸が熱くなる展開。夕方という状況といい、彼女の表情や仕草からといい、可能性が高いように思える。ただ、今までの俺と弥生のふわふわした友達関係を加味すると、残念なことに二番手に落ち着かざるを得ない。



選択肢2、『ピーちゃんの分際でもしかして私を好きなの(笑)?ウケる』的な展開。


他のビッチども相手なら100%あり得るが、相手が弥生だからな。うん、ないな。むしろあってほしくない。もし億が一にでも、これをほんわか声で言われたら、うっかり屋上から落ちてしまうかもしれない。よって、消去。



選択肢3、『ちょっといたずらで聞いてみただけだよぉ』的な展開。


なんかちょうど弥生の声で再生されたし、これが一番有力だな。まあ、青春の甘酸っぱい展開としてはあまり頂けないが、今までの友好関係を維持しつつ、この場の雰囲気をまとめるには他の選択肢よりもいいかもな。



 三つの仮説を吟味すると、やはり最後の展開が最有力だが、この千載一遇のチャンスを逃す手立てはない。俺は、気になっている選択肢1を弥生にぶつけることを決意、そしてぶつけようとした時に、


「ピーちゃんタイムアップだよぉ。女の子の質問にはすぐ答えないと。相手が神崎さんだったら、どうするのぉー」


と、弥生の不平交じりの声が入る。両手の人差し指をクロスさせて小さくバツマークを作っている。


・・・・・ちょっとタイム。何で、弥生が俺の好きな人知っているんだよぉぉぉぉ?今までの俺の努力なんだったんだよぉぉぉ?そんな俺の心の声が表情に出ていたのであろう。弥生は続ける。


「そりゃ、幼馴染だもん。わかるよぉ。」


「そ、そういうもんなのか?」


かろうじて先を促すことに成功。


「うん、それに神崎さんが部活している時、ピーちゃんいつも神崎さんを凝視しているもん」


意識していないうちに女子を凝視しているとか、ドン引きだぜ俺。それに、その光景を人に見られているという事実を叩きつけられるとか、恥かしすぎる。


 そんな俺を複雑そうな表情で見ていたかと思うと、覚悟を決めたかのように透き通る瞳の中に俺をとらえて誓いを述べる。


「だ、だからね」


ここからは俺の予想外。


「私もピーちゃんの恋を手伝わせて下さいっ」


ここに『ピーちゃん恋成功させるぞ連合』が成立した。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る