205:自己紹介 (その2)
ノリリアは、予め用意していたメモを取り出して、団員たちの紹介を始めた。
「まず最初に……、サブリーダーのアイビー」
名前を呼ばれて、離れた場所のテーブルにいた、くすんだ深緑色の髪と茶色い瞳を持つ男エルフが立ち上がった。
「初めまして、ムーンエルフのアイビーです。プロジェクトのサブリーダー及び探索班のリーダーを兼任しています。緊急時、ノリリアが不在の際は、僕に連絡をお願いします」
爽やかイケメンスマイルで、ペコリと頭を下げるアイビー。
うん、嫌味のない笑顔だな、誰かさんと違って……
「次に、インディゴ」
立ち上がったのは、腰まである藍色の長い髪が特徴の、若い人間の女だ。
「インディゴですわ。通信班のリーダーでございます。以後、お見知り置きを」
おぉ、お辞儀の仕方が貴族っぽい。
きっと、良いお家のお生まれなのでしょうね。
話し方はキビキビしているし、表情も自信たっぷりな笑顔で……
まさに、出来る女子! って感じだ。
「次は、衛生班リーダーのロビンズ」
あ、ギンロが見惚れていた水色髪のエルフちゃんだ。
「ロビンズだ。衛生班は文字通り、回復魔法を得意とする白魔導師で構成されている。万が一、船旅の途中で具合が悪くなった者は、その程度に関わらず、我々衛生班を頼って欲しい。勿論、乗組員の方々もだ。よろしくお願いする」
なかなかに男らしい話し方をするんだな。
表情はキリリとしてて凛々しいし、隙がない感じ。
見た目は女の子だけど……、中身は男なのかも知れない。
「今ご紹介したように、今回のプロジェクトでは、メンバーを大きく三班に分けているポ。なので、ここからは各班ごとに紹介していくポね。まず、アイビー率いる探索班のメンバー紹介ポ。チリアン」
「お初にお目にかかります。
フラーラー? 初めて聞く種族だな。
花人ってことは……、あの頭のてっぺんから生えているのは、もしや花びら??
巨大な紫色の花弁が、髪の毛のように垂れ下がっている。
とても優しそうな、おっとりした喋り方だ。
「次は、ブリック」
「ブリックだ。巷では
なんだぁ? すっごいゴツゴツしているぞあいつ。
大きな体は全体的にカクカクしてて、茶色いお顔は岩そのものだ。
ロックマンって言った??
なんかその名前、どっかで聞いたような……、けど俺が知っているのはこんな岩男じゃないな、うん。
「次、ポピー」
「は~い♪ フラワーエルフのポピーちゃんでぇす♪ 専門は黒魔法でぇす♪ よろしくでぇ~す♪」
赤みがかったオレンジ髪、瞳も同じ色のエルフ。
喋り方からして……、ぶりっ子さんだな、うん。
動きも、キャピキャピしてるし、クネクネしてる。
「次、マシコット」
「マシコット……。精霊との、パントゥー、よろしく……」
おいおい、なんだあいつ?
フードを被っている上に、妙な鉄仮面を付けていて、顔が全く見えないじゃないか。
声もくぐもってて聞き取りにくいし、片言だし……、コミュ障ですかっ!?
「次、メイクイ」
「初めまして! チェリーエルフのメイクイだ!! 専門は黒魔法だけど、弓も得意っす!!!」
真っ赤な瞳に金髪、当たり前のようにイケメンな男エルフくん。
ただちょっと、どこかヤンチャそうに見える。
近所のお兄ちゃんって雰囲気だな。
しかしなるほど、カービィがグレコをチェリーエルフと偽るわけだ。
髪色こそ違うけど、チェリーエルフの赤い瞳は、ブラッドエルフのそれととてもよく似ている。
「次、ライラック」
「よろしゅう頼んます。自分は魔法は使えやせんが、武術で皆さんをお守りいたしやす」
おぉ、すごい迫力……
ギンロと良い勝負の屈強な身体を持つ、かなり獰猛そうな外見の虎顔獣人だ。
ずっとあそこに座ってたのか? 気付かなかった。
それにしても、なんだあの毛色??
白をベースにした毛並みには、青みがかった薄紫色の縞模様が入っているのだ。
世にも珍しい虎……、だな、うん。
「次は……、あ、衛生班のメンバーに移るポね。エクリュ」
「あ、は、はいぃっ! よっ、よろ、よろしくお願いします!! パカポ族の、え、エクリュでっす!!!」
ふむ、パカポ族……、どこからどう見ても、アルパカだな彼は。
顔中、ベージュ色のもふもふ毛が生えている。
かなり緊張している様子だけど……、いや、ダイル族に対して怯えているのかも。
「次、サン」
「はいっ! フラワーエルフのサンです!! 皆さんをサポートできるよう頑張ります!!! よろしくお願いします!!!!」
うん、元気っ子だね!
明るい笑顔がいいよぉっ!!
ちょっと声が大きいタイプの女の子ですね!!!
「通信班のメンバーに移るポ。カナリー」
「初めまして、カナリーです。私はガルダリアンと言う種族で、生物学的には翼人種に分類されます。ご覧の通り、背中に翼があって、空を飛ぶ事が出来ます。空中での作業が必要な時は、遠慮なくお申し付け下さい」
ガルダリアン? 知らないな~当たり前だけど。
しかし、大きくて綺麗な翼だこと。
夜でもはっきりと見える、鮮やかな黄色だ。
お顔もとても美しいし、まるで天使みたい。
「次は、レイズン」
「フードを被ったままで、失礼する。常人は、夜間は、私が見えない。私の名はレイズン。影の精霊と人との間の、パントゥーだ」
ほう!? 影の精霊とのパントゥーとなっ!??
フードの内側、モヤモヤとした煙のような真っ黒な闇が広がるその中に、赤色に光る目が二つ浮かんでいるように見える。
それに気のせいだろうか、足がない……?
というか、もしかして、ちょっぴり宙に浮いてるのでは??
影ということは、ローブの中身は、闇の精霊イヤミーと似たような風貌なのだろうか???
だとしたらちょっと、複雑だな……
「次は飼育係の紹介ポ。モーブ」
「はいはいはいっ! やっとこさ私の番ですね、はいはいっ!! 獣人ムスクル族でございますっ!!! まぁまぁ見ての通りのデブッチョですが、働けるデブッチョなのでご安心を~♪」
さっきの真ん丸獣人だ。
ムスクル族が何なのかわからないけど、ピグモルを三倍くらいのデカさにふくらませた感じの風貌だな。
しかしまぁ、太り過ぎだよほんと、風船みたい。
「次も、飼育係のヤーリュ」
「どうも~、
語尾がのびのびの、ニコニコお兄さん。
なんか節くれだった体だなと思ったら、虫なのね君っ!?
例えるなら……、ナナフシだな、うん。
「最後に、古代魔法の専門家、パロット学士」
「え~、此度は我々白薔薇の騎士団の探索プロジェクトにご協力頂き、誠にありがとうございます。古代魔法を専門に研究しております、パロット・ガジェットと申します。皆様のご尽力に感謝をし、この船旅が良きものとなるように願っております。どうぞ、よろしくお願い致します」
頭から長~い二本の角を生やしたパロット学士は、どうやら草食獣系の獣人のようだ。
例えるなら……、そうだな……、鹿かな、うんうん。
とにかく、これで終わりかな?
いや~、長かった長かった……
「以上十八名が、白薔薇の騎士団メ」
「ちょっと待ってくださいぃっ!!!」
大声を上げてノリリアの言葉を遮り、勢いよく立ち上がった者が一人。
近くの席に座っていた、三つ編みお下げ髪の人間の女の子である。
年齢はかなり幼いように見えるが……
「あ! ごめんポ~、すっかり忘れていたポね~!! 精霊召喚師、ミルク!!!」
あ、この子が噂の精霊召喚師なのね!?
ノリリアが、新米だから心配だって言っていた子だな。
「ミルクですっ! 白薔薇の騎士団に入隊して日も浅いですが、頑張りますので、よろしくお願いしますっ!!」
……うん、どうしてかな、初対面だと言うのに、精一杯頑張っているのに空回りしてそうな、そんな雰囲気がヒシヒシと伝わってくる子だね。
「以上! 白薔薇の騎士団、総勢十八名!! よろしくお願いしますポ!!!」
パチパチパチパチパチパチ~
……はぁ。
うん、無理だわこりゃ。
一気に覚えようとする方が間違ってるわ。
気長に、ぼちぼち覚えようっと。
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