188:よろしくお願いしますポ!!!

「キャア~! カービィちゃんっ!! お久しぶりポ!!! 元気だったポー!???」


「お、おう、元気元気……」


テンションアゲアゲで、再会を喜ぶノリリア。

それに対してカービィは、何やらバツが悪そうに、視線を泳がせている。


「まさかこんな所で出会うなんて……、運命ポね?」


うふっ♪ と笑うノリリア。

可愛らしい女の子とはこういう子の事を言うのだろう、両手をほっぺに当てて小首を傾げる仕草がたまらん可愛い。


「で……。返済の目処はついたポ?」


おや? ノリリアの声色が変わったぞ??


ものの一瞬で、さっきまでの無邪気で可愛いらしい表情が一変し、かなり迫力のある目でカービィを見つめている。

こう、なんて言うか、言い逃れはさせないぞ! という気迫のこもった目だ。


「だ……、いやまだ……、その……」


しどろもどろになるカービィ。

なんだなんだ? もしかしてカービィ、この子に借金でもしてるのか??


「まさか……、忘れたわけじゃないポよね?」


「わっ! 忘れてない忘れてないっ!! ちゃんと覚えてるっ!!!」


「なら、早く返してポ。家賃を肩代わりしてあげた100000センス」


……やっぱり。

カービィの奴、女の子に金を借りるなんざ、クズだなおい。


「いや、でもほら、ノリリアも一緒に住んでただろ? だったら、折半で50000センスでいいんじゃないか??」


おお? 一緒に住んでただと?? どういう関係なんだこの二人???


「……カービィちゃん。仲間の前で恥ずかしい思いをしたいポか?」


「うっ、ぐっ……、で、でも! おいらだっていろいろ迷惑被った事もあったぞ!?」


「ポポウ? いいポか?? そんな事言って……???」


「あ、がっ……、ご、ごめんにゃさい」


シュンとなり、謝罪するカービィ。

こんなカービィ初めて見るな。

完全に、このノリリアには頭が上がらないらしい。


「あなた、白薔薇の騎士団のノリリアさんね?」


グレコがずいっと前に出た。


「そうポ。……あなたは?」


「私はグレコ。訳あってカービィとパーティーを組んでるの。それで、私たち四人もこの商船に乗せてもらいたいのだけどいいかしら?」


おうグレコ、痺れを切らしたんだな!

口調は淡々としているけれど、話す速度がかなり早いぞ!!


「ポウ……。それは~、ちょっと無理ポね」


「な、え、どうしてよ?」


「今回の任務は、魔法王国フーガの現国王ウルテル様が直々に下されたクエストなのポ。しくじるわけにはいかないポね。それに、無いとは思うポが、もし万が一事故が起きて、一般人を巻き込んだとなれば白薔薇の騎士団の名折れポ。そうなると全て、今回の任務を任された副団長であるあたちの責任になるポ。後で団長にお仕置きを受けるのは嫌ポ」


……ふむ、なかなかにちゃんとした理由を突き付けられたな。

グレコも言い返す事が出来ないでいる。


「その……、探索ってあれか、アーレイク・ピタラスの墓塔ぼとうの事だよな?」


まだ少し、腰を低くした状態のままで、カービィが尋ねる。


「そうポ。つい先日、ようやく墓塔内の透視が済んだポ。調査によると、墓塔内部にはいくつもの仕掛けがあって、それを解く鍵がないと頂上の部屋へは入れない仕組みなんだポ。だから、それらの鍵が隠されている可能性が高い、今は亡き四人の弟子の隠れ家を探索する事が決定したポね」


「なるほどそういう事か……。でも、現地にはハーピー達が居たんじゃないのか? あいつらがいる限り、墓塔の調査は危険だって……。まさか、殲滅したのか??」


「まさか、ちゃんと対策を取った上での事ポ。ハルピュイア族は絶滅危惧種ポ、殲滅なんてとんでもないポよ」


「そうか……。そうだよな。うん、良かった」


……ん~、なんのこっちゃわからん話が繰り広げられているぞ?

つまりなんだ??

その、アーレイク・ピタラスの墓である塔に入るためには、いくつかの鍵が必要なんだな???


「ねぇ、こんなのはどうかしら? 私たち四人もあなた達のお仕事を手伝うから、船に乗せてくれない??」


めちゃくちゃな提案をするグレコ。

私たちって……、そりゃ、グレコやギンロはお手伝いになるかも知れないけど、俺はどうなるんだよ?

万年お荷物ちゃんな俺は、どうしたらいいんだよ??


「それは無理ポね。一般人をギルドのクエストに参加させるわけにはいかないポ」


うぅ……、見た目のモフモフ感に反して、頭はカチカチに硬いんだなノリリアよ。

その返答に、グレコがはぁ~っと重い息を吐く。

 すると……


「モッモは、特級召喚師だぞ」


カービィが、ぽつりと零した。


「えっ!? 今なんて言ったポ!??」


驚くノリリア。


「だから、そこにいるモッモは、おいらが知る中でも最高の精霊召喚師だと言ったんだ。ジョブの資格こそ持ってないけど、召喚の儀もなしに、意のままに精霊を呼び出す事が出来る」


俺の事を指差しながら、カービィは話し続ける。


「世の中の偉人と呼ばれる者達の墓には、十中八九、精霊の護りがかけられているだろ? それを解けるのは精霊召喚師のみ。魔導師はそれが出来ない……。だけど、モッモなら大丈夫だ。先日も闇の精霊を召喚して、強大な魔結界の排除に成功したんだからな!」


「まさか……、あのブーゼ伯爵の騒ぎ、カービィちゃん達が解決したポ!?」


「そうだぞ。何を隠そう、あの悪魔石を持ったユークの魔結界を解いたのは、このモッモなんだ!」


「ポポッ!? 凄いポねっ!!?」


……そんなに凄い事をした気はないのだが。

ノリリアの可愛らしい驚き方に、俺はニヘラと緩んだ顔で笑ってしまう。


「おいら達も、いずれアーレイク・ピタラスの墓塔に向かうつもりだったんだ。ノリリア、この機を逃す手はないと思うぞ? 特級召喚師もいるし、おいらもいる。商船に乗せてくれれば、それ相応の働きをするつもりだし、お互い好都合じゃねぇか??」


「ふ~む……、なるほどポねぇ……」


短い腕を胸の前で組み、考え込むノリリア。

そして……


「わかったポ! 実は、新米の精霊召喚師しか連れて来れなかったポから、ちょっぴりその力量には不安があったんだポ。あるのか無いのかわからない精霊の護りの為に、うん百万出して他所からベテラン召喚師を雇うのもどうかと思ったポし……。騎士団のみんなには、後であたちから説明しておくポね!!」


グッ! と、親指を立てて見せるノリリア。


「おっ!? じゃあ、契約成立だな!??」


「いいポ! 乗船費用はあたち達白薔薇の騎士団が持つポ!! だからカービィちゃん達は、あたち達の探索および調査に全面協力するポよっ!?」


「おぉっ! 有難いっ!! いいよなモッモ!??」


「も、勿論っ!!!」


「よぉ~し、話がまとまったようだな……。じゃあ、俺様のタイニック号に乗るのは、王立ギルドの十八名と、そこの四人の計二十二名って事で、異論はないか?」


「よろしくお願いしますポ!!!」


いよっしゃあっ! なんとか乗船にこぎつけたぞぉっ!!

それも、呪いを解く方法が隠されているという大魔導師アーレイク・ピタラスの墓塔にも登れるかも知れない!!!

一石二鳥とはまさにこの事だぜ、ヒャッハー!!!!


喜ぶ俺たち四人の前で、ザサークは契約書の乗船人数を二十二人に修正した。

こうして、何とかかんとか、俺たちのパーラ・ドット大陸へ向かう道が開けたのだった。

 しかし……


「あっ!? でも、十万センスは早急に返してポね!!!」


ノリリアに鋭く睨まれたカービィは、俺に頭を下げて、返済の肩代わりを請うのであった。

……親しい間柄でも、お金の貸し借りはやめましょう、だね。

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